動画・音声などのコンテンツをインターネット配信するストリーミング・システム分野で,マイクロソフトの存在感が急速に増している。5月下旬以降に相次いで始まったブロードバンド向けのコンテンツ配信では,4社中3社がマイクロソフト製品を採用した。クライアントOSの高いシェアが功を奏した。

 ストリーミングの分野は,製品化で先行したリアルネットワークスの「RealSystem」がこれまで市場を支配してきた。しかし,ブロードバンド(広帯域ネットワーク)向けに関しては,ちょっとした異変が起こっている。

 この5月末から6月にかけて,アスキー,エイベックス,ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME),ニフティの4社は相次いでブロードバンド向けのコンテンツ配信サービスを開始した。ADSLやCATVなどの高速回線を利用しているユーザー向けに,プロモーション・ビデオや映画の予告編などを配信する()。

 これら4社のうち,リアルネットワークスの技術を使っているのはニフティだけだ。残りの3社は,マイクロソフトの「Windows Media Technologies」を採用している。

 マイクロソフト躍進の原動力となったのは,コンテンツ再生ソフト「Media Player」の“数の力”だ。同ソフトは,Windows Meや同2000などに標準搭載されており,利用可能なユーザー数が非常に多い。リアルネットワークスも,再生ソフト「RealPlayer」を無償配付しているが,わざわざインターネット経由でダウンロードしなければ使えない。

 今回コンテンツ配信を始めた4社は,いずれも「ブロードバンドのインフラは,まだまだ過渡期」(SMEの盛田昌夫コーポレイト・エグゼクティブ)と認識しながらも,「いち早くユーザーを囲い込むためには,少しでも利用可能な人が多いマイクロソフトの技術を採用したほうが有利」(SMEデジタルネットワークグループの今野敏博部長)と判断した。

 さらにMedia Playerは,Webブラウザの「InternetExplorer(IE)」と密接に統合されており,「コンテンツの表現力がRealPlayerより高まる」(SMEの今野部長)ことも事業者にとって魅力だった。

 マイクロソフトのもう一つの強みは,不正コピーを防ぐ「デジタル著作権管理(DRM)機能」が充実していることだ。マイクロソフトの配信用サーバー・ソフトには,DRM機能が標準で組み込まれており,配信データのコピー回数や再生回数などを制限できる。この配信用サーバー・ソフトはWindows2000 Serverに標準搭載されており,事業者は追加費用なしで利用できる。これに対してリアルネットワークスの「RealSystem」の価格は,システム規模によって異なるが,おおむね100万円を超える。さらにDRM機能を利用するには,他社製のソフトを別途購入する必要がある。

 エイベックスの依田巽会長兼社長は,「インターネットによるコンテンツ配信で最初に懸念される不正コピーの防止機能が,マイクロソフトは優れている」と評価する。現在はリアルネットワークスの製品を採用しているニフティも,「他のサービスではマイクロソフトの配信技術も採用しており,今後は映画配信にも利用を拡大する可能性がある」(サービス企画部の石井健太郎リーダー)としている。

(井上 理)

サービス名称
(事業者)
開始時期 内容 料金 音声・動画
配信技術
avexnet TV
(エイベックス)
5月24日 所属アーティストのプロモーション・ビデオや音楽情報番組などを配信 無料 Windows
Media
Technologies
enban.net
(アスキー)
5月24日 独自のラジオ番組やゲーム・ソフト,漫画などを配信 ゲーム配信のみ
月額500円
Windows
Media
Technologies
Happie in @nifty
(ニフティ)
6月1日 短編映画や映画の予告編,CS 放送の番組などを配信 @Nifty 会員は無料,その他は月額300円 RealSystem
MORRICH
(ソニー・ミュージックエンタテインメント)
6月1日 所属アーティスト のプロモーション・ビデオやコンサートのライブ中継などを配信 無料 Windows
Media
Technologies
表●大手各社は相次いでブロードバンド向けコンテンツ配信事業を開始した