インターネット専業のジャパンネット銀行とイーバンク銀行が携帯電話ユーザーの利用を前提にした,電子商取引(EC)決済サービスを相次いで強化する。利便性を前面に押し出して,携帯電話ユーザーの獲得を狙う。パソコン・ユーザー向けのサービスだけでは,成長が早晩頭打ちになると判断した。

図●ジャパンネット銀行の顧客口座数の推移
携帯電話向け電子商取引サイトの決済サービスを充実させて,2003年10月に100万口座の獲得を目指す

 国内第1号のインターネット専業銀行,ジャパンネット銀行が携帯電話ユーザーの獲得に本腰を入れ始めた。開業3年後の2003年10月に100万口座という目標を達成するためだ。

 同社はこれまで顧客口座数を順調に伸ばしてきた。開業11カ月目の今年8月には約35万口座を獲得した([拡大表示])。今年3月にヤフーが運営するインターネット・オークション「Yahoo!オークション」の利用者向けに決済サービスを提供したのを皮切りに,人気サイトと相次いで提携したのが功を奏した。

 だが,パソコン向けECサイトの決済サービスを提供するだけでは,成長に限界がある。パソコンそのものの普及率は早晩頭打ちになるうえに,ECの“ヘビー・ユーザー”の多くはすでにインターネット銀行の口座を開設済みと見られるからだ。パソコン・ユーザー向けECサイトの決済サービスは,富士銀行やスルガ銀行といった一般銀行のインターネット支店も手がけており,決定的な差異化策とはならない。

 そこでジャパンネット銀行は100万口座の獲得に向けて,携帯電話向けECの決済サービスを充実する。まずは「携帯電話ユーザー向けの決済機能を手軽に提供できるという利点を前面に押し出して,ECサイトの運営者を取り込む」(宮川琢弥企画部企画グループ部長代理)。ジャパンネット銀行の場合,振込人(顧客)と振込先(ECサイト運営者)の両方が口座を持っていれば,口座振替機能を使って,すぐに決済機能を提供できる。しかも手数料は1件当たり10円と格安だ。

 通信事業者に通信料金と一緒に代金を徴収してもらえば,今でも携帯電話ユーザー向けの決済機能は提供できる。しかし,この方式はNTTドコモをはじめとする通信事業者に「公式サイト」として認可してもらうことが前提となるうえに,認可は簡単には得られない。「申請から認可までに数カ月かかることもある」(携帯電話向けにコンテンツを提供するサイバードの藤岡清事業開発部モバイルコンサルティンググループチーフコンサルタント)。

 今年7月に開業したイーバンク銀行も,ジャパンネット銀行と同様の戦略を採る。イーバンク銀行は自前のポータル・サイトに同社の決済サービスを利用可能なECサイトのリンク集を掲載している。今後はそこに「携帯電話向けECサイトも掲載し,利用を促進する方針」(マーケティング部の永島祐二氏)だ。開業3年後の2004年7月に150万口座の獲得を目指す。

 なお,もう一つのインターネット専業銀行であるソニー銀行は,資産運用銀行としてのサービスを重視しており,「携帯電話EC向けに特別な決済サービスを提供するかどうかは未定」(広報)としている。

(栗原 雅)