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 UNIXサーバーのミッドレンジ機を巡る大手メーカー間の争いが激化している。日本ヒューレット・パッカードと日本IBMは,「打倒サン」を明確に意識した新製品を相次いで投入する。「処理性能はもちろんのこと,信頼性と可用性においてもサン製品を超える」と両社は主張している。

 日本HPと日本IBMの新製品は,いずれもサン・マイクロシステムズが今年4月に出荷開始したミッドレンジ機「Sun Fire 6800」をターゲットに開発された。搭載するプロセサの性能を強化したほか,Sun Fire6800の最大の売り物である信頼性と可用性の向上に力を注いだ。

 日本HPが9月18日から出荷した「hp server rp8400」は,既存のミッドレンジ機「hp9000 N4000」の後継機。搭載プロセサをPA-8600から最新のPA-8700に変更するとともに,最大プロセサ数を8個から16個に増やした。米HPでUNIXサーバー製品のマーケティングを担当するヴィッシュ・ムルチャンド氏は「rp8400のトランザクション処理性能はSun Fire6800を20%程度上回る」としている。

 一方,日本IBMも10月中に,ミッドレンジ機「e server pSeries 660」の新モデルを発表する見通しだ。米国では9月10日に発表した製品で,搭載するプロセサ(RS64zM)の動作周波数を668MHzから750MHzに向上した。

 しかし処理性能の高さを訴えるだけでは,「打倒サン」は難しい。これまでもHPとIBMのミッドレンジ機は,サン製品を上回る性能を発揮していた。それでも両社のミッドレンジ機の販売は,「インターネット・ビジネスでの実績」を前面に押し出すサン製品に押され気味だった。

 もちろん,このことは日本HPや日本IBMも承知している。そこで両社は,サンを圧倒的に上回る信頼性/可用性を新製品で実現しようと努めた()。

 特にメモリー・エラー対策は徹底した。HPとIBMの新製品は,いずれもデータを複数のメモリー・チップ(DRAM)に分散して配置することで,メモリー・チップ障害の影響を軽減する機構を備えている。

 「この機構を使うと,修復不可能なメモリー・エラーが発生する確率を,ECC(誤り符号訂正)方式の100分の1程度にまで減らせる」(日本IBM Webサーバー製品事業部の野村宣生製品企画担当)という。

 さらにIBMの新製品は,プロセサ障害への対策も充実させた。障害が発生したプロセサで実行中の処理(プロセス)を,他のプロセサが自動的に引き継ぐ機能を装備した。この機能は,IBMの次世代サーバー開発計画「eLiza」の成果を一部先取りしたものである。

(玉置 亮太)

メーカー名 日本ヒューレット・パッカード 日本IBM サン・マイクロシステムズ
(参考)
機種名 hp server rp8400 e server pSeries 660 Sun Fire 6800
搭載プロセサ
(動作周波数)
PA- 870 (650M/750MHz )
×最大16 個
RS64 IV (750MHz )
×最大8 個
UltraSPARC III (750MHz )
×最大24 個
最大主記憶容量 64G バイト 64G バイト 192G バイト
入出力バス PCI ×16 PCI ×56 PCI ×32
特徴 ●データをメモリー上の複数領域に分散させて,メモリー障害の影響を軽減する機能を搭載
●主要なハードウエア部品を多重化
●データをメモリー上の複数領域に分散させて,メモリー障害の影響を軽減する機能を搭載
●障害が発生したプロセサが実行中の処理を自動的に他のプロセサへ割り振る機能を搭載
●主要なハードウエア部品を多重化
●主要なハードウエア部品を2 重化
●プロセサ・ボードやメモリー・ボードを動作中に交換したり追加可能
価格 約2560 万円から* 未定(米国での価格は6 万1955 ドルから)* 5293 万6000 円から*
出荷時期 2001 年9 月 2001 年10 月(予定) 2001 年4 月
表●日本HPと日本IBMの新しいミッドレンジUNIXサーバーの概要
サンの競合製品の仕様も参考に示した
* 使用プロセサ数に応じて課金する料金体系を導入している