2001年度の中間決算は,富士通とNECの2社がそろって減収減益となった。景気の低迷がパソコン市場を直撃し,両社の販売台数を10%以上も落ち込ませたことが最大の原因だ。ソフト・サービス事業は拡大したが,パソコンの減収を補えなかった。日立はディスクがけん引役となり,5%の増収を達成した。

表●大手メーカー3社の2001年度上半期(4~9月)におけるコンピュータ部門の業績(連結)

 富士通,NEC,日立製作所の大手メーカー3社が,2001年度上半期(2001年4~9月)の決算を発表した([拡大表示])。富士通とNECはともに減収減益,日立は増収増益と明暗を分けた。コンピュータ部門の営業利益を見ると,富士通は前年同期から29%減,NECは同37%減という惨状。一方,日立は同19%増と好調ぶりが目立った。

 このコントラストをもたらした“張本人”は,パソコン販売の不振である。電子情報技術産業協会の出荷統計によると,パソコン市場は徐々に伸び率を小さくしていたが,第2四半期(2001年7~9月)に入って,ついに前年同期の実績を21%も割り込んだ。

 特にパソコン・メーカー最大手のNECは,販売不振の影響をもろに受けた。出荷台数は前年同期よりも37万台少ない142万台。市場全体と同じ21%減を記録した。

 NEC関係者によれば,「企業向けの販売は10%程度伸びたものの,個人向けの出荷台数が30%近く落ち込んだ」という。失業率の上昇などを危ぐした消費者が,家計の支出をしぼり始めたことが原因と見られる。NECのパソコン事業における個人向けの比率は8割弱に達する。このため,販売不振の影響を最も大きく受けた。ちなみに,富士通の国内パソコン販売台数は10%減の121万台だった。

 パソコン販売の減少は,関連製品の事業にも少なからずマイナスの影響を与えた。富士通のハード・ディスク装置の売り上げは,前年同期比21%減の1300億円に落ち込んだ。NECの光ディスクやフロッピ・ディスクの販売も前年同期の実績を割り込んだという。

 ただし,富士通とNECのソフト・サービス事業は,パソコン事業の不振を補うには至らなかったものの大きく伸びた。「ユーザー企業の情報化投資が回復の傾向を強めている」(富士通の高谷卓副社長)からだ。NECのソフト・サービス売上高は前年同期比19%増の3600億円となった。「製造業ユーザー向けのSCM(サプライチェーン管理)やCRM(顧客関係管理)が伸びた。金融機関のインターネット・バンキングや,通信事業者の携帯電話サービス向けシステムも好調だった」(NEC広報)という。富士通も,前年同期比4%増の9600億円に売り上げを拡大した。

 日立製作所のパソコン販売は,3%減の28万7000台だった。しかし,パソコンの売上比率が2社よりも小さいために,パソコン不振の影響を富士通やNECほどは受けなかった。その結果,5%の増収を達成,営業損益も19%の増益となった。

 日立のけん引役となったのは,ソフト・サービス事業と磁気ディスク事業だ。ソフト・サービス事業の売り上げは4500億円。伸び率は,NECや富士通を上回る25%に達した。「金融,公共ユーザー向けのシステム・インテグレーションが大きく伸びた」(日立広報)。磁気ディスク事業の売上高は前年同期比20%増の1200億円。中でも海外における事業は好調で,同29%増の900億円(日経コンピュータ推定)に伸びた模様だ。

(森 永輔)