大手情報技術(IT)企業の経営トップに,2002年の情報化について展望してもらった。発言をまとめると,一つのキーワードが浮かんでくる。それは,「ITルネッサンス(再生)」である。ユーザー企業の再生をIT企業が支援できて初めて,IT企業自身の再生が実現する。難局を乗り切るには,人材の育成が欠かせない。

 景気の低迷が続き,2002年の先行きについても不透明なままだ。しかし,悲観しているだけでは展望は開けない。「これだけ状況が悪い今こそ,人がやらないことを断行するチャンス。なまじ景気がいいとかえって思い切った改革ができない」(北城恪太郎IBMアジア・パシフィック プレジデント)という発想転換が必要だ。

 先が見えない今,前例にとらわれず企業や社会の改革を断行し,その改革をITで支援していくしかない。2002年のキーワードを,「ITルネッサンス(再生)」とした所以である。

 実際,ユーザー企業と相対する大手IT企業のトップは,ユーザー企業の改革への動きを感じ取っている。

 「顧客企業が事業再構築と連動して基幹系システムを思い切って刷新する動きは2002年も間違いなく続く。顧客の期待に応えられる力を持っていれば,システム・インテグレーション(SI)事業は成長を続けられる」(NECの西垣浩司社長)。

 「2002年は,お客様企業が抜本的に事業を改革し,再生を目指す動きが顕在化するとみている。お客様の経営トップにお会いしていると,その決意をひしひしと感じる」(大歳卓麻日本IBM社長)。

 IBMを除くIT企業の多くは厳しい決算を余儀なくされているが,その理由は携帯電話やパソコン事業の失速に伴う半導体不況にあり,SI事業は各社とも堅調である。ただし,SIプロジェクトの内容はますます高度かつクリティカルなものになっており,2002年以降,IT企業の責務は一段と重くなる。

 典型事例は,トヨタ自動車が進める基幹系システムの大刷新である(本誌2001年12月17日号特集を参照)。プロジェクトに参加している日本IBMの大歳社長は,「日本はもちろん,米国からも技術者を動員し,オールIBMでトヨタを支援させていただく。トヨタの取り組みは,日本企業が躍進していた時代の象徴だった鉄鋼や新聞社の先進プロジェクトに匹敵する」と語る。

 ユーザー企業の期待に応え,IT企業自身が自己改革をして,SI力を強化すれば,ユーザー企業のグローバリゼーションと相まって,IT産業の悲願であるSIの国際化も進むだろう。

 NECの西垣社長は,「SIは基本的にドメスティックな事業。しかし,当社が参画させていただいている,トヨタ自動車の電子カンバンやNTTドコモのiモードといったプロジェクトはグローバルに展開していく。当社もそれに合わせて世界に出ていきたい。顧客の成功があってこそ,当社の成功がある」と語る。

再生のカギは人材

 ルネッサンスは人を中心に据えた革新運動であった。ITルネッサンスにおいても,人がすべてである。「顧客の経営や業務に踏み込んで提案ができる人材をもっともっと増やす。5年前から米国に人を送って勉強させてきたので,核になる人材は準備できた」(東芝の岡村正社長)。

 米マイクロソフトのリック・ベルーゾ社長兼COO(最高執行責任者)も,「2002年は当社にとっても変化の年」とし,「営業体制や顧客サポート,人員配置や社員教育などあらゆる点を改善する」と語る。

 NECは2001年10月から,同社の標語を,「Empowered by Innovation」に変えた。全世界の社員4000人から寄せられた提案の中から,英国の社員が出した案を西垣社長が自ら選んだ。「ITを使った改革の狙いは,人のパワーアップだ。当社の社員もパワーアップしなければならない」(西垣社長)。

 日本の人材を強化できないと,中国やインドなどの技術者に仕事を奪われるシナリオが現実になりかねない。「中国やインドの技術者を日本で活用するのは簡単ではない。しかし日本以外の国が取り組んでいる以上,日本企業にとってもアジア・パワーの活用は不可避」(北城IBMアジア・パシフィック プレジデント)だからだ。

(横田 英史)