インターネット利用者の身元を確かめる「本人認証」と,取引などが行われた時刻を保証する「時刻認証」を組み合わせたサービスが多様化している。従来からデータの作成者や内容を保証するサービスはあったが,今秋からは電子商取引や契約向けシステム構築・運用サービスが相次ぎ登場する。
認証局が発行するデジタル証明書を使った本人認証に加えて,時刻認証を提供すると表明しているのは,NTTコミュニケーションズとソフト開発のベンチャー・ユニオン(東京都渋谷区)の2社。いずれも今秋をメドにサービスを開始する。
これまでは,本人認証サービスまたは時刻認証サービスのいずれか一方を提供しているベンダーがほとんどだった。「本人認証では,“だれが契約データをやり取りしたか”を明確にできる。今回の時刻認証サービスを追加することで“いつやり取りしたか”も明確になるため,電子商取引の信頼性をより高められる」と,NTTコミュニケーションズ Eプラットフォームサービス部BLADE部門の小林伸好 部門長は説明する。
NTTコミュニケーションズは電子商取引システムなどの構築・運用をアウトソーシングで請け負うサービス「BLADE」に,時刻認証サービスを追加する。時刻認証は,(1)システムを構成するサーバーの時刻合わせと,(2)システムが取り扱う契約データの作成日時を証明する,という二つの用途に利用できるようにする予定だ。
ベンチャー・ユニオンは,契約システムやインターネットを利用した電子株主総会用システムなどの構築支援サービス「Trusted Data Centerパッケージプログラム」で,本人認証と時刻認証サービスを提供する。本人認証では,正規のインターネット利用者に契約データの閲覧を許可する。時刻認証では,インターネット利用者が契約データを閲覧した日時などを正確に特定する。「Webやメールの使用状況をシステム利用者ごとに追跡できる当社製ソフト『Mail4u』と組み合わせれば,契約業務の進み具合いを把握できる」と,ベンチャー・ユニオンの植村文秋代表取締役は説明する。ベンチャー・ユニオンは同社のサービスを,主にデータセンターに設置するシステムに向けて販売していく。
2社に先駆けて,本人認証と時刻認証の仕組みを組み合わせたサービスを2001年4月から提供してきたのが日本電子公証機構(東京都渋谷区)だ。同社の「dPROVE」はインターネット経由でやり取りする契約データなどの登録日時を保証したり,データが改ざんされていないかどうかを第三者としてチェックするサービス。いわば公証役場と同様のサービスをインターネットで提供している。
dPROVEの利用者は本人認証の仕組みを使って,インターネット経由で送信したい契約データなどを日本電子公証機構に登録する。その後日本電子公証機構から「登録証」が届く。dPROVE利用者は,登録証と契約データを合わせて取引先の相手に送信する。取引先の相手は,受け取ったデータが改ざんされていないかどうかを,登録証を使って日本電子公証機構のWebサイトで確かめられる。
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表●本人認証と時刻認証を利用したサービスの概要 |