NECやサン・マイクロシステムズ,富士通が6月から順次,「自律機能」を備えるミドルウエアやサーバー製品を出荷する。アプリケーションの実行時に,必要に応じてプロセサやメモリーなどのハード資源を自ら割り当てる。米IBMが進めるサーバー自律機能強化プロジェクト「eLiza(イライザ)」に対抗する。
アプリケーションの実行時にサーバーに負荷が集中し,処理性能が落ちてきた。するとサーバーはアプリケーションの処理を止めずに,自動的に新たなプロセサやメモリーを確保し,性能の低下を防ぐ。障害が発生した場合は,サーバーが自らその障害を検知して修復する――。生物のように,環境の変化に応じて自らを調整する「自律機能」が,次世代サーバーのキーワードとして急浮上している。
NECはこの6月に,プロセサやメモリーといったハード資源をサーバーが実行時に最適配置するミドルウエア「HA/GlobalMaster」を出荷した。米サン・マイクロシステムズは今年中をメドに,複数のサーバーを接続した環境で,ハード資源を自動的に最適配置できる機能を実現する予定。富士通も,同様の機能を2003年夏を目標に実現する計画である(表)。
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表●主要サーバー・メーカーの「自律機能」強化策 *1 superdomeやrp7410など,プロセサ・ボードが独立しているタイプの製品が対象 |
サーバーの自律機能に注目が集まるきっかけを作ったのは,IBMのeLizaプロジェクトだ。IBMはeLizaにおける研究を通じて,障害を事前に検知・修復する「自己修復」や,不正なアクセスから自らを防御する「自己防御」,ソフトを自動的に更新する「自己構成」,ハード資源などの最適配置を実現する「自己最適化」の4分野の強化を狙っている。
NECやサン,富士通が手がけるサーバーの自律機能は,eLizaの「自己最適化」に当たる。アプリケーションの実行時に必要に応じてプロセサやメモリーなどのハード資源を確保し,追加して割り当てる「動的資源配置」を行うことで,処理の遅延やサーバーのダウンを防ぐ。サッカー・ワールドカップのチケット販売システムのように,不特定多数の利用者がいっせいにアクセスする電子商取引システムで効果を発揮する。
IBMのメインフレームやサン,米ヒューレット・パッカード(HP)のUNIXサーバーは,すでに動的資源配置機能を一部実現している。各社がいま手がけているのは,この機能をより強化したり,利用できるプラットフォームを拡大するといった動きだ。NECはUNIXサーバーだけでなく,インテルのプロセサを搭載するパソコン・サーバーでも動的資源配置の機能を実現する予定。サンと富士通は,これまで同一きょう体内での最適配置にとどまっていた機能を,ネットワーク接続した異なるサーバーにまたがる形に拡張することを狙っている。