7社のシステムを論理的に分割

図●適格退職年金用システムの概要。各社は,自社向けのシステムだけにアクセスできる

 JPSはメインフレームで新規に構築した適年用システムを使い,各社から預かった契約データを管理する。1台のメインフレームを論理的に七つに分け,7社分の適年用システムを用意。各社の事務担当者が自社の適年用システムだけにアクセスできるようにした([拡大表示])。契約管理のアプリケーションは各社が同じものを使う。このアプリケーションはJPSが住友生命から使用許諾を得たものを,7社が共同利用できるように改良した。

 今回のシステム共同化は,いわば住友生命のシステムに“片寄せ”した形になる。これは,1996年12月に稼働を開始した住友生命のシステムが,他の6社のものに比べて機能が充実していたからだ。「住友生命のシステムに揃えることは,住友,三井,明治の3社でシステム共同化を構想した段階で固まっていたので,どの会社のシステムを使うかで混乱することはなかった」と,JPSの中西部長は説明する。

 3社は2000年12月から「住友生命にシステムを一本化」という構想を基にシステム共同利用を業界他社に提案し,参加を呼びかけた。その結果,朝日生命など4社が賛同した。

意識統一と移行テストに注力

 プロジェクトを始めるに当たり,特に注意したのが,各社の役割分担を明確にすることだった。「7社のシステム移行担当者が集まり,昨年4月から3カ月間,合宿を実施するなど集中的に打ち合わせを行い,各社の認識を一致させた」(中西部長)。JPSは適年用システムの開発に加え,生保各社が契約データの変換に利用するツールの作成や,各社から預かったデータを新システムに移す作業を受け持った。

 一方,生保各社は,JPSの適年用システムと接続するための社内システム側の開発や,JPSに送るデータの変換作業を担当。正しくデータを移行し,新システムの処理結果に異常がないかどうかを確認する責任も持った。生保7社のうち,共同化を提案した住友,三井,明治の3社は,他の4社への支援も担当した。さらにJPSと生保7社はテストにも注力。昨年10月から6カ月間を移行テストに充て,1社当たりテストを7回繰り返した。

 生保業界では別途,日本生命保険と第一生命保険が共同で同様の取り組みを進めている。損保業界で代理店向けシステムが3本立てになっている現状をみると,生保業界全体でシステムを一本化するのは難しそうだ。

(西村 崇,松浦 龍夫)