防衛庁は独自に、情報システムの調達の改善に乗り出した。メインフレーム全盛時代に確立したソフトの調達手法を、より現在の開発手法などに対応したものに変えるのが狙い。これによってソフトの調達価格の適正化を進める。9月にソフトの開発原価についての調査を開始した。

図●防衛庁がソフトの調達方式の改善を考えた理由
現状の方式では、大きく二つの問題点がある
 システム調達の改善を目的として、防衛庁は9月に「ソフトウエアの原価計算方法に関する調査研究」という入札を実施した。入札には大手シンクタンクの三菱総合研究所だけが参加し、同社が1067万3000円で調査を請け負うことになった。同社は今年度中に調査結果をまとめる。この結果を生かして、防衛庁は年間約130件で総額280億円前後という、情報システムのソフト調達プロセスの問題点([拡大表示])を解消することを狙う。

 防衛庁技官の伊田勝彦 管理局原価計算部原価計算官補佐は、「今の時代、民間企業でもソフトの開発コストの算定には頭を痛めているようだ。そこで外部の専門家を使って、ソフトの開発原価を調査することにした」と語る。防衛庁は今後3年程度をかけて、より精度の高いソフト開発コストの見積もり手法を導入することも検討している。

 防衛庁が情報システムなどでソフトを調達する場合、既成のパッケージ・ソフトのように市販価格があるものはその価格を参考にして、入札時の上限価格となる予定価格を決定する。この予定価格によって、不必要に高い価格でシステムを調達することを防ぐ。しかし大半の業務系の情報システムはその都度開発するものであり、市販価格は存在しない。こうしたシステムの場合には、防衛庁がソフトの原価を自ら算定して落札企業の利益分などを加え、予定価格を決める。

 防衛庁はソフトの原価を計算するために独自の計算方式を使う。だが最近、この方式による原価計算の精度が下がるという問題が生じてきた。理由は、現実のシステムの開発手法が、計算方式の前提と大きく変わってきたことにある。

 これまでの計算方式は基本的にプログラムのライン数を基に原価を算定する。GUIを使った開発ツールや、ソフト部品の再利用が当たり前のオブジェクト指向による開発、一部にパッケージを使ったシステム開発などのコストを割り出すのにはあまり向いていない。一方で、情報システムの規模は大型化し、調達コストも増大している。予定価格を正確に算定できなければ、多額の予算が有効に使われないことになる。

 防衛庁は、契約によっては「原価監査付き契約」という手法で、ソフトの納入後に財務諸表から開発原価を調査。落札価格が高すぎた場合には余剰分を返納させるという調達コストの適正化策を導入している。しかしこの方法には、落札業者に「できるだけ安いコストで作ろう」というインセンティブが働かない欠点がある。正確な予定価格が算定できるようになれば、この欠点をある程度補えるようになる。

(中村 建助)