NTTデータやCSKなどが参画する民間団体「eBPフォーラム」は、来年3月末までにIT資格認定制度を開始する。官主導のITコーディネータ制度と同様の理念を掲げながらも、「新規事業をプロデュースできる人材を育てる」と独自性を強調する。だがベンダー色が強く、普及には不安材料も多い。
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表●eビジネスプロデューサー(eBP)とITコーディネータの比較 |
eBPフォーラムは「中小企業の情報化を促進するための、経営とITが分かる人材の育成」を理念に掲げ、民間の25企業・組織が集まって9月20日に設立した資格認定団体(表[拡大表示])。具体的には「eビジネスプロデューサー(eBP)」と呼ぶ人材の育成を目指す。eBPとは「ITを駆使した新規事業の創造を、現場で実践できる人材。経営者の意図をくみながらプロジェクトを完遂させ、新規事業を成功させる使命を持つ」(eBPフォーラムの事務局長を務めるシープロドの小林茂雄社長)。
eBPフォーラムは来年3月までに、eBPの職務内容や必要とされるスキルを体系化し、それに基づいてeBPの資格認定試験を開始する。職務内容やスキルのランク付けは、経済産業省が策定中の「ITスキルスタンダード」と整合性をとる。eBPフォーラムは、上位資格の保持者をWebサイトで公開したり、セミナーを開催するなどして、資格保持者と経営者のマッチングも行う。2003年中に約500人の認定合格者を目指す。
同様の理念のもとに官主導で始まったITコーディネータ制度は、税理士や中小企業診断士、情報処理技術者などの資格保持者が、15日間の研修を受けるだけで取得できるため、その実効性が問われている。そこでeBPフォーラムは、ITの知識に加え、新規事業戦略の策定やプロジェクトマネジメント、社内外との調整など、プロデューサーに必要な素養を身につけられる教育プログラムを用意する。
eBPフォーラムの会長には多摩大学の中谷巌学長が就任。NTTデータやCSKといったベンダー、TACや日本漢字能力検定協会といった教育関連の会社/組織などが、理事として名を連ねる。もともとIT人材の育成に興味があったWebインテグレータのシープロドと、グローバルナレッジの2社が中心となって団体設立を働きかけた。
現場主義を掲げるeBPフォーラムだが、不安材料も多い。主催する企業にベンダーやインテグレータが多く、ベンダー本位の資格認定にならないかという懸念がある。経営とITの両方の素養を持つ人材育成の方法論を確立することも至難だ。また、eBPフォーラムにはITコーディネータのように政府からの補助金がなく、不安視される。当面の資金源は、会員が支払う年会費(法人10万円、個人1万円)だけである。