既存資産を生かし開発工数を削減

図●武富士は新たな顧客を開拓するため、ローンカードにクレジットカード機能を組み込み、クレジット専用の決済システムを開発した
クレジットカード加盟店に置く無線端末から、パケット通信サービス「DoPa」を利用して決済する

 武富士のユニークなビジネス・モデルを支えるのが、会員管理や加盟店管理、与信照会、クレジット決済などの機能を持つ新システムだ(15ページの[拡大表示] )。利用者が武富士の加盟店で商品を購入すると、加盟店の担当者が決済用の無線端末(写真)にクレジットカードを装着。NTTドコモのパケット通信サービス「DoPa」を利用して、会員の属性データや売買データを新システムに送信する。与信照会で問題がなかったら、利用者のクレジット口座から購入金額を引き落とし、その翌日に手数料を差し引いた金額を加盟店の口座に振り込む。

 武富士は新システムの構築にあたり、「既存のシステム資産を極力生かしながら、クレジットカード機能を追加する」(馬場常務)という基本方針を打ち出した。データベースは、融資サービスを処理する基幹系システムのものを利用し、データ項目などを追加。アプリケーションは、基幹系システムに付加する形で新規開発した。いずれも、基幹系システムが動く日本IBM製メインフレームで稼働させた。

 NTTデータが運営する「CAFIS」をはじめ、国内外のクレジットカード与信・決済システムとの接続に必要なシステムは、日本ストラタステクノロジー製の無停止型サーバーに搭載した。このサーバーには、メインフレームにある決済用データベースのバックアップの役割も持たせる。毎月数回、基幹系システムをメンテナンスする間も、クレジット決済を実施できるようにした。

 既存資産を生かしたとはいえ、開発規模は35万ステップ(言語はPL/IとCOBOL)に及ぶ。新規開発に25万ステップ、基幹系システムの修整に10万ステップを費やした。

 大がかりな開発に加え、基幹系システムの機能をすべて再テストしたにもかかわらず、武富士はビジネス・モデル立案からわずか半年でシステム稼働にこぎ着けた。コーディングの期間は2カ月に過ぎなかった。

 馬場常務によれば、「新システムの開発費用は、一から開発した場合の10分の1程度」という。同社は具体的な金額を明かさなかったが、本誌の独自取材によれば30億円程度だった。一般に数百億円と言われるクレジットカード・システムの開発費用としては破格の“低額”開発である。システム開発プロジェクトの責任者を務めた高瀬逸穂(いつほ)情報システム部担当部長は、「短期開発に成功したことで、人件費を抑制できた。基幹系システムなど既存資産の利用を徹底したことに加え、加盟店に固有のカスタマイズなどの例外処理を原則として排除したことが奏功した」と説明する。

基幹系の経験者を中核に短期開発を実現

 武富士は、スケジュールが遅延したり、要件定義どおりの機能を実現できない、といったトラブルの可能性を一つずつ排除して、短期開発に取り組んだ。

 まず、同一人物に業務とシステムの設計を任せることで、両者の乖離(かいり)を防いだ。業務とシステムの両面に精通した社員10人が、現行業務の変更をできるだけ少なくする、既存システムをできるだけ利用する、という2点を強く意識しながら設計を進めた。

 基幹系システムを新システムに生かす一方で、基幹系システムにはかなりの修整を加えることが必要だった。そのため、システム・インテグレータには、基幹系システムの開発を担当したCSKを指名。システム稼働後も武富士に常駐していたCSKの技術者約50人を中核に、プロジェクト・チームを結成した。

 武富士が投入した技術者は、ピーク時で300人に達した。武富士は、相互の依存度が強い複数のプログラム開発チームを20~50人規模の“群”としてまとめ、進ちょくを管理した。その結果、「一つの群で開発が遅れても、プロジェクト全体に及ぶ影響を最小限に抑えることができた」(高瀬担当部長)。

 テストは特に念入りに行った。前述した10人の設計担当者が、テストのシナリオ作りも実施。一方、営業経験者を中心に「業務試験チーム」を組織し、現場の業務とシステムの整合性を確認した。

(広岡 延隆)