富士通と野村総合研究所(NRI)が相次ぎ、Javaアプリケーションの開発を効率化するソフトウエア・フレームワークを大幅に強化した。メインフレーム並みの信頼性を備えた基幹システムをオープン環境で実現することが狙い。メインフレーム“代替”の動きをいっそう加速させる可能性が高い。
富士通は1月30日にソフトウエア・フレームワーク「B2.Sframework(ビーツードットエスフレームワーク)」を発表した。既存のフレームワーク製品である「Interstage Apcoordinator」に、メインフレーム並みの信頼性を実現する機能を提供する「e.Frame」というオプション用ソフトと導入支援などのサービスを新たに追加して実現したものだ。システムの構築にはサーバー向けJava技術群「J2EE」を主に使う。一部にマイクロソフトの「.NET Framework」も利用できる。2月末から本格的に販売を始める。
一方のNRIは、J2EEフレームワーク「オブジェクトワークス」の強化を急ピッチで進めている。昨年12月には、オブジェクトワークスの新版R4.0を出荷した。R4.0ではJ2EEのサーバー向けソフト部品であるEJBコンポーネントの開発支援ツールなどを追加した。1月27日には、日立製作所との提携を発表。日立のWebアプリケーション・サーバー「Cosminexus(コズミネクサス)」やOLTP(オンライン・トランザクション処理)ソフト「OpenTP1」とオブジェクトワークスを連携させて、既存のソフト資産を生かす形でJ2 EEアプリケーションを構築できるようにした。
「勘定系もフレームワークで作れる」
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図1●富士通とNRIがフレームワークを強化した背景 |
富士通、NRIによるフレームワーク強化の狙いは共通している。「基幹システムをメインフレームからオープン環境に短期間で移行させたい」という企業のニーズに応えることだ(図1[拡大表示])。
「昨年後半から、大規模な基幹系システムをオープン環境で構築したいというユーザー企業が急増している。そのなかには、メインフレームからの移行も多い」と、富士通システムインテグレーション事業本部の三浦壽男(ひさお)本部長代理は説明する。NRIシステムコンサルティング事業部の八木晃二ITソリューションコンサルティング部長も、「もはやオープン化の波は基幹系システムにまで及んでいると肌で感じる。実際、案件も多い」と同意見だ。
一方で、「それらの企業からの要求レベルは非常に高い」と富士通の三浦本部長代理は指摘する。「特にユーザーが気にしているのは“信頼性”。オープン環境でもメインフレーム並みの高い信頼性が求められる。それでいてシステムの構築期間はメインフレーム時代の2分の1以下しか許されない」(三浦本部長代理)。
開発生産性を高めるには、フレームワークを利用して、できるだけ新たに開発する部分を少なくするのが現実的だ。すでにJ2EEによるアプリケーション開発では、フレームワークの利用が一般的になっている。フレームワークを使うと、システムの保守性が向上することも期待できる。しかし、既存のフレームワークはいわゆるWebアプリケーションの開発を支援するものが大半で、「メインフレームの信頼性が要求されるアプリケーションを開発するには機能が足りなかった」(富士通システムインテグレーション事業本部SI技術統括部の坂下善隆統括部長)。
富士通とNRIはフレームワークを強化することで、ユーザー企業からの要求に応えることを狙っている。富士通のB2.Sframeworkは、同社が過去3年間に手がけた約2000件のオープン・システム構築案件を通じて得た構築ノウハウやソフト部品、さらにメインフレーム用ミドルウエアのノウハウをフレームワークとして体系化した。「B2.Sframeworkを使えば、オープン環境で銀行の勘定系システムでさえも構築できる」と、富士通の坂下統括部長は豪語する。
NRIの八木部長も、「オブジェクトワークスR4.0で、大規模なアプリケーションを実現するうえで欠けていた機能をほぼ補うことができた。ユーザーの開拓に弾みをつけたい」と意欲をみせる。