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なかなか離陸しない「XMLデータベース」ビジネスに活を入れるために、主要ベンダーが一斉に戦略転換を図っている。販売の主軸をXMLデータベース単体からデータベースを組み込んだ特定用途向けシステムへと移し、“用途”を強調する方針に変える。一方で新規参入ベンダーが相次ぎ登場している。

 「ユーザーに製品を説明する際に、“XMLデータベース”という言葉を使ってはならない。社員にはこのように厳命している」。こう語るのは、XMLデータベース「Yggdrasillイグドラシル」を販売するメディアフュージョンの榊原淳社長である。

 メディアフュージョンは4月から、「EsTerraエステラシリーズ」と呼ぶ新たな製品群を順次出荷する。EsTerraは「電子申請向け」といった特定用途向けのアプリケーション開発ツールとYggdrasillを組み合わせた製品。EsTerraを利用するユーザーは、Yggdrasillが裏で動いていることを意識する必要はない。

 同社は今後、Yggdrasillの単体売りではなく、EsTerraの販売を中心にすえる計画だ。Yggdrasillの出荷実績は約250ライセンス。「EsTerraの投入で、2003年度は一気に3倍の750ライセンスの販売を目指す」(榊原社長)。

図●XMLデータベース・ベンダーの販売戦略
既存組がメリットを強調する方向に転換する一方、新規参入も相次ぐ

 XMLデータベース「Taminoタミーノ」を販売するビーコンIT プロダクトマーケティングの田中聡主任は、「Tamino単体の販売は続けるが、用途をより明確にすることが必要」と話す。1月には、ワークフロー・ソフト「XurasジュラスWorkflow」の出荷を始めた。EsTerraと同様、Taminoを組み込んだ特定用途向けの製品である。Taminoのユーザー数は累計で100社を超えた程度。来年度は「新たに100社への導入を目指す」(田中主任)と、こちらも鼻息が荒い。

 既存ベンダーが戦略を変換する一方で、XMLデータベース市場への新規参入が相次いでいる([拡大表示])。主にリアルタイム・システム開発を手がけるセックが昨年4月に「Kareareaカレアレア」を、昨年11月に三井物産が「NeoCore XMS」を投入。この4月には、サーバー・ソフト開発のプロキューブが「TagStore」を出荷する。

立ち上がりが遅い市場の活性化を狙う

 XMLデータをそのままの形で格納して手軽に使える、リレーショナル・データベース(RDB)より高速な検索が可能――こんな触れ込みで約4年前に登場したXMLデータベース。だが、ベンダーの期待に反して市場の立ち上がりは遅い。

 理由は大きく二つある。まず、そもそも企業でXMLの利用が進んでいない。XMLが使われない限り、XMLデータベースの需要も喚起されない。「2000年は『XMLとは何か』の説明で終わった。最近、コンテンツ管理などXMLが向く分野がやっと見えてきた」とビーコンITの田中主任は証言する。

表●日本で販売されている主なXML データベース製品
昨年から今年にかけてKareareaとNeoCore XMS、TagStoreが登場した

 もう一つの理由は、オラクルをはじめとするRDB製品と競合すること。「“データベース”と呼ぶだけで、ユーザーはオラクル製品をイメージしてしまう」とメディアフュージョンの榊原社長はいう。しかもRDB製品の多くはXMLデータを格納し利用できる。ベンダーがいくら優位性を強調しても、複数のデータベース製品を持つことをユーザーは望まない。

 しかし、ここにきて一般企業でもXMLが普及するきざしがみえてきた。既存ベンダーは、XMLデータベースを前面に出さず、XMLデータベースを組み込んだ特定用途向け製品を出すことで、一気にその機運にのることを狙う([拡大表示])。

(松浦 龍夫)