東京海上、損保ジャパン、三井住友海上など損害保険会社大手6社は自動車損害賠償責任保険向けのシステムを共同で開発し、来年9月をメドに稼働させる。共同開発によって各社が負担する開発費用を減らす。大手6社が共同でシステムを開発するのは損保業界初の試みである。
自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)向けシステム「e-JIBAI」を共同開発するのは、東京海上火災保険、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおい損害保険、日本興亜損害保険、ニッセイ同和損害保険の大手6社。6社が取り扱う自賠責保険の契約件数は合わせて3400万件。業界全体の84%に達する。将来的には、契約全体の8割がe-JIBAIで処理されることになる。
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図1●損保大手6社が共同化に合意した自動車損害賠償責任保険共同システム「e-JIBAI」の概要 代理店にはASP方式でサービスを提供。損保会社各社の代理店システムからも、e-JIBAIは利用できる |
e-JIBAIは、ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)方式で保険代理店にサービスを提供する。(1)保険の申し込みデータを受け付ける「自賠責機能」と、(2)コンビニ決済サービスなどに処理を振り分ける「決済機能」を備える(図1[拡大表示])。システム運用は野村総合研究所、開発は日立製作所が担当。来年9月にも稼働する。
各社の多くは現在、自賠責保険の申込書を代理店から受け取り、事務担当者が保険システムに手作業でデータ入力している。「保険料計算が簡単でシステム化の対象にしづらかったことや、1社で業務改善しようにも政府の許可が下りないので、やりようがなかった」(あいおい損保 IT企画部の宮島康司次長)からだ。
だがここ数年、状況が一変。損保大手各社は新しい代理店システムの整備を進めてきたが、次の段階としてシステムに共通機能を盛り込むことを考えるようになった(代理店システムの各社の取り組みについては7月28日号、特集2を参照)。
そこで、「自賠責保険システムの共同化の話が1~2年前から持ち上がった」(日本興亜損保 IT企画部企画グループの金井徳幸課長)。自賠責保険は補償内容が法律で決まっていることから、「専用システムを1社で開発しても共同開発でも盛り込む機能は同じ」(ニッセイ同和損保 情報システム部IT企画室の中島一郎上席推進役)だからである。
システムを共同開発することで、「コストは、1社単独で開発する場合の数分の1程度ですむ」(損保ジャパン 事務・IT企画部の石井敏愛(としちか)課長)と、参加各社は見込む。さらに、「数日かかっている申し込み手続きも電子化することで瞬時にできる」と、三井住友海上の砂浦孝吉IT企画グループ長は語る。
新システムは、オープン・システムで一から開発する。e-JIBAIに匹敵する自賠責保険システムを6社とも持っていないからだ。新システムの開発規模や利用ソフトなどの詳細はこれから詰める。今後6社は「e-JIBAIを社会的なインフラ」(東京海上 IT企画部企画室企画グループの田巻義一副参事)と位置付け、他の損保会社にも利用を呼びかける。