外資系保険会社大手のアメリカンファミリー生命保険(AFLAC)は3月から、FOMAのテレビ電話機能を使った遠隔面接を全国で展開する。死亡保険の加入希望者の健康状態をチェックするのが目的。従来、専門の担当者が出向くか、医師に任せる必要があった作業を省力化した。

図●顧客と「生命保険面接士」をテレビ電話で結ぶ

 「投資額はわずか50万円。画質は上々で、健康状態のチェックにも十分実用的だ」―。アメリカンファミリー生命保険 契約審査部の佐々木光信医長は顔をほころばせる。同社が昨年8月から試験導入を始めた、遠隔面接システムのことである。NTTドコモの第3世代携帯電話「FOMA」のテレビ電話機能を使う([拡大表示])。FOMAの人口カバー率が全国で99%に達する3月末をめどに、導入拠点を現在の10カ所から40カ所に拡大して、本格的に運用を始める予定だ。

 各保険会社には、一定額以上の死亡保険契約を希望する顧客に専門家の面接を受けてもらい、健康状態を確認するという社内規定がある。この場合の専門家とは、医師、または生命保険協会の認定資格「生命保険面接士」を持つ社員。死亡給付金の額によってどちらが担当するかは異なるが、面接士ですむ場合がほとんどだ。

 ところが、アメリカンファミリーの社内には面接士が20人しかいない。東北地方では仙台に1人といった具合で、都市部以外では面接士を顧客のもとに出向かせることが難しかった。同社の主力商品は医療保険やガン保険であり、死亡保険の契約獲得のためにあまり人手をかけるわけにはいかないからだ。こうした点で、全国の津々浦々に数百人の面接士を配置している国内の大手生命保険会社とは、大きく事情が異なる。

 このため、アメリカンファミリーでは従来、保険代理店の担当者が顧客と契約先の開業医に行き、健康診断を受けてもらうことも多かった。1回当たり約5000円のコストもさることながら「医院に出向くことが顧客に与える心理的負担が大きく、契約獲得の障害になってきた」(佐々木医長)という。

 健康チェックの手順は以下の通りだ。死亡保険の申し込みを受けた保険代理店の担当者は顧客のもとを訪れ、簡単な説明の後にFOMAを手渡す。一方、東京・調布のアメリカンファミリーの拠点には、社内の面接士が、FOMAと通信できる据置型のテレビ電話機の前で待機している。面接士は顧客に渡したものと同じチェックシートを参照しながら、「病歴があるか」、「喫煙するか」といった項目について一つひとつ尋ねていく。この間、10~15分。寝たきりの人が健康状態を偽って保険に加入するといった事態を防ぐため、歩行の様子もテレビ電話で確認する。

 顧客の健康情報という重要なプライバシ情報を扱うため、きめ細やかな配慮も欠かさない。例えば、代理店の担当者には、面接を開始する際にいったんその場を離れさせ、顧客の会話の内容を聞かないようにする。携帯電話の内蔵スピーカを使わず、顧客にわざわざイヤホンをつけさせるのもこのためだ。面接後のチェックシートは、顧客がその場で封筒に入れてのり付けし、代理店の担当者に手渡す。さらに、面接士が通信内容を録画しないことを告知書に明記した。

(本間 純)