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日立製作所とNECは4月1日付で、大規模な機構改革を実施した。いずれも顧客の業種や担当製品によって縦割りだった組織に風穴を開けた。システム・インフラ関連ノウハウを新設の全社横断組織に結集し、高い信頼性が求められる大規模システムを短期間で顧客に提供することを狙う。

図1●日立製作所のプラットフォームソリューション事業部の概要
システム・インフラの提供を担当する全社横断的な組織という位置づけだ
図2●NECの4月1日以降の組織体制

 日立製作所(情報・通信グループ)は「プラットフォームソリューション事業部」を、NECは「MC(ミッション・クリティカル)システムビジネスユニット」をそれぞれ4月1日付で新設した。いずれも、特に高い信頼性が求められる基幹系システムを、短期間で構築するための組織だ。

 「オープン・システムの規模が大きくなる一方で、インフラ技術はいっそう高度になってきた。そこで、どんな業種のシステムでも高信頼/高性能なインフラを提供できるように業務アプリケーションの設計/構築担当部隊とは別に、専門家集団を作ることにした」。日立の松縄正人(まさひと)プラットフォームソリューション事業部長は、インフラ専門組織を新設した理由をこう説明する。

 NECの鹿島浩之助執行役員常務経営企画部長も同様の見解を示す。「ここ1、2年でネットワーク構築は大規模化・複雑化が進み、信頼性の確保や基幹系システムとの兼ね合いを考慮する必要が高まっている。こうしたマーケットの状況を反映し、システム構築とネットワーク構築のノウハウを組織的に融合させた」とする。

 富士通もハード/ソフト製品を担当するシステムプロダクトビジネスグループ内に、「TRIOLE推進室」など同様の組織を複数を持つが、独立した事業部にするには至っていない。

日立は3年後に800人規模に

 日立の新組織は、インフラの構築を担う。同社がインフラ専門の事業部を立ち上げるのは今回が初めて。新事業部は、サーバーやメインフレームといったハードと、OSやミドルウエアといったソフトを使ってシステム・インフラの設計/構築/運用サービスを提供する。アプリケーション開発フレームワークの整備も担当する。

 新事業部は当初、370人体制でスタートする。これまでソフトウェア事業部やエンタープライズサーバ事業部といったハード/ソフトの製品事業部に所属していた開発者と、システム構築を担当する業種別事業部出身のSEからなる(図1[拡大表示])。3年後の2006年度には800人体制にする予定だ。

 新事業部はシステム・インフラの性能や信頼性を向上させるノウハウを蓄積する。ハード/ソフトの組み合わせごとに、パラメータ設定情報や製品の導入/テスト手順をテンプレートとしてまとめておく。

 発足当初は、UNIXサーバーを中心に60種類のテンプレートを用意する。今後は、Linuxといった他のプラットフォームの設計/構築に関するテンプレートを追加したり、運用ノウハウを蓄積する。2006年度にはテンプレートを150種類まで増す。「蓄積したノウハウは、仮想/自律コンピューティング構想『Harmonious Computing』に生かしていく」(松縄事業部長)。

 同じく4月1日付で、日立はパソコン・サーバー部門を、情報・通信グループ エンタープライズサーバ事業部に移した。これまでパソコン・サーバーは、パソコン/情報家電を扱うユビキタスプラットフォームグループが担当していた。今後はエンタープライズサーバ事業部がシステム関連のハード全体の開発・保守をする。「一つの事業部がハードを一元的にみることで、サポート・サービスを迅速に提供できる」と、北野昌宏エンタープライズサーバ事業部長は説明する。

NECはネットのノウハウを注入

 一方、NECのMCシステムビジネスユニットは、これまでシステム構築サービス担当事業部内にあった組織を独立させた事業部だ。

 それにとどまらず、ネットワーク事業部から一部技術者を転属させた。同社が昨年から進めているシステム・サービス事業とネットワーク事業の融合を加速させるためである。鹿島常務は、「NTTドコモの基幹系システムなど、当社は高可用性が求められるシステムやネットワークを手がけてきた。これらの案件で培ったノウハウを集結させた」とアピールする。

 このほかNECは4月1日付で、全社の事業部の構成を見直した。9事業部門を11の「ビジネスユニット」に再編した。加えて事業横断的な組織を複数設けた(図2[拡大表示])。グループ内のリソースを最大限に活用することを目指す。「2004年度は収益力の増強と成長を狙う、ターンアラウンド(再生)の年。今回の組織改革は、その布石」と鹿島常務は意気込む。

 例えば新設の「マーケティングユニット」は「全社レベルの視点から、既存のリソースを活用しつつ、まったく新しい市場の開拓を担当するのが役目だ」(鹿島常務)。この部門は金杉明信社長が直轄する。マーケティングを軽視する日本のITベンダーとしては、珍しい取り組みである。

 さらには全社横断的な課題について検討する組織「委員会」の位置づけを強化した。マーケティングや研究開発、社内の業務改革といったトピックについて、金杉社長以下各組織の責任者が集まる。課題の早期解決策や事業間の連携強化策を検討する。

 これとは別に、全社スタッフ部門の下に「ソフトウェア事業企画室」を設けた。組み込み用などソフトウエアの適用範囲が広まっていることを受けた措置。システム構築事業や半導体など、事業の垣根を越えてソフト開発ノウハウを強化する。

(高下 義弘、西村 崇)