大林組は4月、ナレッジ・マネジメント・システム「TRI-KP」を稼働させた。「社員がどう活用したか」の履歴に基づき、問題の解決に使ったデータベース内の情報すべてを関連づけることが特徴。履歴を使って情報の検索を効率化するとともに、必要な情報を漏れなく引き出せるようにした。

図●大林組がナレッジ・マネジメントで実践している情報の関連づけの考え方

 「社内に存在する玉石混こうの情報から『玉』の情報だけを効率よく引き出せるようにしたい」。ゼネコン大手である大林組の藤澤康雄 技術研究所企画管理部情報システムグループ長は、TRI-KPを導入した狙いをこう話す。

 TRI-KPは、社員が研究開発や建築を進める過程で必要なノウハウを共有する「ナレッジ・マネジメント」のシステムである。中核を成すのは、プロジェクトのなかで発生した問題の内容や、解決に利用できる技術情報を格納したデータベース。このデータベースを基に、設計や工事といった建築のフェーズごとに技術情報を分類して管理する「ワークプレイス」や、研究開発や建築のプロジェクト・チームが情報共有するための「ワークグループ」などの機能を実現している。データベースから、必要な情報を自然文検索で探し出す機能も備える。

 なかでも特に目を引くのが「関係履歴」機能だ。社員がプロジェクトのなかで直面した問題と、解決のために活用した情報を関連づけて管理する。これにより、キーワードや文の書き方によって検索結果がばらつくという、検索機能の一般的な弱点を補う。

 「外壁にタイルをしっかり張り付けられない」という問題Xを「タイル張り付け工法」という情報Aと「タイルはく落防止ネット」という情報Bを使って解決したとする([拡大表示])。TRI-KPは、問題Xの内容に「○月○日に情報Aと情報Bを利用した」といった利用履歴を追加してデータベースに格納。同時に情報Aと情報Bに対し、「○月○日に問題Xに使われた」といった履歴を追加する。

 その後、社員が問題Xに類似した問題にぶつかったとする。TRI-KPで問題Xを見つけたら、利用履歴を通じて情報Aと情報Bにたどり着く。問題Xを検索できない場合でも、情報Aが見つかれば「芋づる式に情報Bを発見できる」(藤澤グループ長)のがTRI-KPの特徴である。多少手間はかかるものの、芋づる式の検索によって、解決に必要な情報を見逃すといった漏れを防止できる。

 大林組は数年前に建築本部や設計本部といった部門ごとにイントラネットを構築。問題解決に役立つ情報を共有し、自然文検索で探し出せるようにしていた。だが、「社員の使い方によって検索できる情報に差が出たり、情報量が増えたことで問題解決に必要な情報を漏れなく探し出すのが難しくなった」(藤澤グループ長)。

 大林組は4月1日に、研究開発部門である技術研究所の全社員約260人を対象にTRI-KPを稼働。施工を担当する建築本部や土木本部に順次展開していく。TRI-KPの動作OSはRed Hat Enterprise Linux。ジャストシステムと共同開発した。

(栗原 雅)