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来年11月、日本IBMのメインフレームOS「OS/390 V2R10」のサポートが終了する。OS/390の後継である「z/OS」の普及を米本社から迫られた日本IBMは、ユーザーへの移行提案を強化している。しかし、OS移行による機能向上やコスト削減よりも安定稼働を重視するユーザーの腰は重い。

図●OS/390 V2R10(バージョン2リリース10)のサポートが来年11月で終了
今年9月で受注停止になるz/OS V1R4を逃すと、OS/390 V2R10から移行する際、同一システム内での新旧OSの共存やデータ共有などの保証がなくなる

 「もうすぐサポート終了だからz/OSにバージョンアップしろ? IBMの都合に合わせてお金は出せないね」。ある大手金融機関のシステム担当者は、日本IBMの提案を即座に断った。

 日本では2000年問題対策を機に更新した後、そのまま“凍結”してしまったメインフレーム・システムが多い。それらは90年代末のハード「S/390 G5/G6」と、OSの「OS/390 V2R10(バージョン2リリース10)」やそれ以前のリリースを使い続けてきた。

 「世界的にはIBMメインフレームの4割近くがz/OSになったが、日本では1割台」(zSeries事業部の渡辺朱美事業部長)。IBMの世界的な戦略はメインフレームを巨大Linux機としても提案して、UNIXサーバーから業務処理を奪還すること。64ビット・アドレスの新型機zSeriesとz/OSへの更新がその大前提だ。日本IBM関係者によれば大歳卓麻社長は昨年秋、米本社のzSeries総責任者に「移行提案を急がせる」と確約したという。

 OS/390 V2R10のサポートが終了する来年11月以降は、新発見のバグがあっても修正ソフトの提供などの支援を受けられなくなる注)。「古いOSのサポートを続ければ、そのコストはユーザーに負担を求めることになり、ユーザーにとってもデメリットが大きい」(渡辺事業部長)。

 さらに「z/OS V1R4」は日本を含む全世界で今年9月9日で受注停止になる([拡大表示])。それまでに発注しないユーザーは移行作業の負担が大きくなる。現在z/OSの最新版はV1R5だが、移行作業中にOS/390 V2R10と同一システム内で共存させることをIBMが保証するのは、V1R4までだからだ。

 日本IBMは「z/OS環境に移行すれば、プロセサの利用量に応じた従量課金体系(WLC:ワークロード使用料金)を選べるので、IBM製のOSやミドルウエアの月額利用料が平均2割弱下がる。ハードも、S/390 G5/G6ユーザーがz/OSに移行する場合入れ替えを提案するが、新型機は同じ月額リース料でG5/G6の約2倍の性能を提供できる」(zSeries事業部の久野重幸製品企画部長)と訴える。OS/390ではWLCは選べない。

 しかしユーザーは「安定稼働が最優先。OS移行は避けたい」(大手地銀)と素っ気ない。「旧OSの大口顧客を見捨てられないはず」(大手金融機関)ともみる。実際OS/390 V2R10は海外では今年9月でサポートを終了するが、国内ユーザーの圧力により日本だけ特例で約1年延長した。「いきなりz/OSは無理でも、せめてOS/390 V2R10へ早く移行してと訴えている」(日本IBMの営業支援SE)のが実情だ。より魅力ある移行提案が必要だが、「割引料金などz/OSへの移行促進策の具体的な内容はまだ検討中。6月末までに確定する」(渡辺事業部長)。

(広岡 延隆)