PR
日本旅行は今年4月、顧客情報/予約管理システムを稼働させた。各営業拠点に分散していた顧客情報を一元管理して、個人顧客向けサービスの向上を目指す。システムの開発・実行環境に.NET Frameworkを採用。メインフレームとのデータ連携に苦労したが、4カ月遅れで稼働にこぎつけた。

図1●日本旅行が個人顧客情報/予約管理システム「eカルテ」を開発した経緯
図2●今年4月に稼働したeカルテのシステム構成
 日本旅行が今年4月稼働させたのは、個人顧客の情報管理と個人向け旅行の予約管理をするWebシステム「eカルテ」。システム名は、日本旅行の社内で、旅行サービスの受注管理票を「カルテ」と呼んでいることにちなんだ。

 eカルテは日本旅行の営業部門や管理部門、270以上の営業拠点の担当者、さらには旅行サービスの提携販売店の担当者が利用する。予約機能はインターネット経由で個人顧客が利用できるようにしている。

 eカルテは、旅行サービスの受注履歴やニーズといった、個人顧客向けにサービスを提供するための情報を管理する機能や、交通機関や宿泊施設の予約管理機能を備える。予約管理では、旅行予約の確認、請求書の作成、入金管理を行う。予約管理機能と連動して営業担当者に入金の確認や通知を促す機能も盛り込んだ。社内や営業拠点からeカルテに接続するパソコンの台数は約5000。収容可能な顧客数は約200万人。毎月250万件の予約を処理することを想定して開発した。

サービス向上と業務効率改善を図る

 日本旅行はeカルテを利用することで、個人顧客に対するサービス品質の向上を目指す(図1[拡大表示])。これまで、各営業拠点が個別に管理していた個人顧客の情報を、eカルテで一元管理する。「顧客が当社グループのどの店舗に来店しても、eカルテで管理する旅行商品の購入履歴に基づいて、適切な商品の提案やサービスを提供できる」と、日本旅行の木下恒男 情報システム部長は説明する。

 eカルテ導入の狙いはほかにもある。それは、営業拠点での業務効率の改善を図ることだ。最近では、飛行機や宿泊施設を店頭のカウンタから予約して、その場で旅行パッケージにまとめて提供するなど、個人顧客向けの旅行商品が多様化してきた。その半面、店頭の窓口担当者の負担は大きい。

 「飛行機や鉄道、宿泊施設といったさまざまな予約をすべて把握しながら、顧客の購買状況を管理していくのは、店頭では大変な作業。そこでシステムで業務効率を向上させることを狙った」(木下部長)。

 日本旅行は2007年の店頭における販売額を2002年に比べて600億円増やし、2300億円にすることを目指している。日本旅行の木下部長は、「eカルテを使うことによって、サービス品質の向上と営業力の強化を目指す。当初の売り上げ目標を達成できるよう、システム面で貢献していきたい」と意気込みを語る。

開発生産性を考えて.NETを採用

 eカルテの技術面における特徴は、 .NET Frameworkを採用したこと。予約管理、顧客情報管理といった大手旅行代理店の基幹業務にあたる大規模システムの開発で .NETを採用したのは珍しい。

 「当初はJava開発も検討した。しかし、『開発要員を確保しやすい』、『開発環境のVisual Studio.NETを使うことで開発生産性を向上できる』といった観点から、.NET Frameworkを採用することにした」と、木下部長は説明する。ハードは日本ユニシスの大型サーバーES7000で稼働する。ソフト開発の規模は、ファンクション・ポイントで約700。開発費用は、ハード、ソフト合わせて6億円になる。システム・インテグレータとして日本ユニシスがプロジェクトに参加した。

 eカルテは、顧客向けのWebサイトのほか、日本旅行の社内やグループ会社向けのWebアプリケーションも提供できるようにしている(図2[拡大表示])。社内向けWebアプリケーションでは、画面操作性の高いリッチ・クライアントを実現するためにアクシスソフトの「Biz/Browser」を採用した。「当社の社内ネットワークには、64k~128kビット/秒のフレームリレー網を使っている部分がある。通信するデータ量を抑えつつ操作性を高めるためにBiz/Browserを採用した」(木下部長)。

他システムとのデータ連携に苦労

 プロジェクトは2002年11月からスタートした。昨年2月までに業務分析を終えて、昨年3月から5月までの3カ月間で詳細設計をすすめ、6月からプログラム開発に着手。その後、日本旅行は昨年11月末にテストを実施してシステム開発プロジェクトを完了させることにしていた。

 プログラム開発作業までは順調に進んだ。しかし9月、思わぬ難関が待ち構えていた。鉄道会社や航空会社といった予約データのやり取りを担当するメインフレーム・システム「QRシステム」の一部のデータをeカルテがうまく取り込めないことが判明したのだ。例えば、「1万円」という情報を含んだQRシステムのデータを取り込むと、eカルテが「1000円」と誤判断するケースがテストで見つかった。

 不具合が発生したのは、QRシステムで管理するデータの中身を分析し尽くすのが難しかったからだ。「QRシステムが扱う電文は、鉄道会社や航空会社ごとに異なる。そのため、パターン化が難しかった」と、木下部長は説明する。例えば鉄道会社1社のデータでも、シーズン限定の料金体系があったり、子供と大人の違いで料金などのデータが変化したりする。「メインフレームは30年近く利用してきたもの。特別な計算条件が出るたびにプログラムを修整してきた。データの分析で手間取るとは、想像がつかなかった」と振り返る。

 そこで、昨年9月から2カ月かけて、メインフレームで扱う予約データを分析。100以上のケースで、eカルテが正しくデータを読み込めないことがわかった。「データが正しく読めるかを確かめ、不具合が見つかれば直す。これを何度も繰り返すことで、問題を解決していった」(木下部長)。

 当初、昨年内で終える予定だったシステム開発プロジェクトは、最終的に4カ月延びた。データの不具合を洗い出して修正をしたあと、今年4月5日、本格稼働にこぎつけた。メインフレーム側の開発は、データ分析作業を含めて150人月かかった。

 日本旅行は今後、eカルテと同じ .NETの環境に、アプリケーションを追加していく。「eカルテという、顧客情報と予約管理の基礎ができた。今後は、その基礎の上に、旅行パッケージ商品の情報を管理する機能や、顧客の購買分析などに役立てられるデータ・ウエアハウスを追加していきたい」と、木下部長は今後の見通しを語る。新たに追加するアプリケーションは来年1月に稼働させる予定だ。

(西村 崇)