安いだけでは通用しない――。第9回顧客満足度調査の結果をまとめると、こうなる。ハードウエア分野を中心に、重視する項目として価格/料金を挙げる企業の割合が低下。ユーザー企業の関心は、製品の信頼性やサービスの品質に戻りつつある。ポスト・デフレ時代に向けた製品/サービスのあり方を、システム構築/運用サービスからハード/ソフト、ネットワークに至る全22分野で徹底検証する。

(福田 崇男、鈴木 孝知)

価格一辺倒に変化
品質/信頼性が焦点に

今回の顧客満足度調査では、回答企業の行動に変化が見られた。製品価格やサービス料金を重視する回答企業が減少、代わって品質や信頼性に重きを置く企業が増えてきた。価格/料金の値下げ競争が激化し始めてから数年、もう安いだけでは顧客の心はつかめない。

 風向きが変わりつつある。日経コンピュータが今年5月に実施した「第9回顧客満足度調査」の結果を分析したところ、評価に当たって製品価格やサービス料金を重視する回答が、いくつかの分野でめっきり減った。システム運用関連サービスを例にとると、「特に重視する項目」として料金を選択した企業の割合(重視度)が0.24(回答企業の24%)と、昨年5月に実施した前回調査(重視度0.34)に比べて3割も減った。

 ハードウエア関連でも、パソコン・サーバー分野の価格の重視度が0.35と前回(0.42)より2割弱下がった。UNIXサーバーのように、0.40から0.26へと3割以上、低下した分野もある。価格/料金に対する重視度は2002年に実施した第7回調査から、上昇の一途を辿っていたが、今回歯止めがかかった。

 ここ数年ハードウエア製品の値下げ競争が続き、それに伴って運用関連サービスの料金も低下した。今回の調査からは低価格/料金以外の価値をユーザー企業はベンダーに求め始めている兆候が読み取れる。システム運用やハードウエア製品分野で、トラブル対応に代表されるサービス品質や製品の信頼性に関する項目の重視度が、各ベンダーの順位を大きく左右した。

 もちろんシステム構築サービスやソフトウエア製品などの分野は、相変わらず価格/料金に対する重視度が高い。だが、これまでのように低価格路線一本やりではユーザー企業の高い満足度は得られなくなりつつある。

 本誌はコンピュータ関連の製品やサービスに対する企業ユーザーの評価を明らかにするため、1994年から顧客満足度調査を実施している。9回目に当たる今回は、大手から中堅・中小に至る1万2315社の情報システム部門を対象に今年5月に実施。1617社から有効回答を得た(調査方法の詳細は、こちら)。

 前回と同じくシステム構築/運用サービスから、ハードウエア/ソフトウエアに至る19分野の顧客満足度を調査した。このほか新たにネットワーク・サービス2分野とウイルス対策ソフトの満足度も調べた。調査対象は計22分野となった。

NECネクサが首位に躍進

図1●アプリケーション関連サービス4分野の順位表。企業名横の数値は満足度の点数(100点満点)

 アプリケーション関連サービスでは、情報サービス会社が激戦を繰り広げた。システム構築関連サービスで、NECネクサソリューションズが急浮上(図1[拡大表示])。満足度を4ポイント以上も上乗せし、前回の6位から首位に躍り出た。「完成したシステムの品質」をはじめとする重視度の高い項目での高評価が躍進の原動力となった。対照的に、前回首位のリコーは、品質に対する評価を下げたことが響き、2位にとどまった。

 毎回メーカー系保守会社が接戦を繰り広げる情報システム会社のシステム運用関連サービス部門では、3強の一角に異変があった。前回2位の日立電子サービスがやや失速。表彰台は確保したものの、1位のNECフィールディングや2位のユニアデックスに満足度で水をあけられた。日立電子サービスは運用サービスの品質にかかわる「トラブル・シューティング」や「セキュリティ対策」といった項目で、上位2社に及ばなかった。

 一方、メーカーのシステム構築関連サービス部門と同システム運用関連サービス部門はともに無風。両部門とも日本ユニシスと日本IBMの外資系2社が前回に続いてワン・ツー・フィニッシュを飾った。

図2●ハードウエア関連5製品10分野の順位表。企業名横の数値は満足度の点数(100点満点)

信頼性が上位進出のカギに

 パソコン・サーバー製品の分野は、デルが6回連続で首位に立った(図2[拡大表示])。「ハードの価格」で2位の日本ヒューレット・パッカード(日本HP)に18.1ポイントの大差を付け、総合でも逃げ切った。ただしデルは、この分野で最も重視度が高い「ハードの信頼性」で、ランキング対象7社中6位と低迷。2位(前回も日本HP)との総合満足度の差は前回の4.9ポイントから2.6ポイントに縮まっている。

 信頼性重視の傾向が順位に色濃く反映されたのが、毎回混戦のUNIXサーバー分野。上位の顔ぶれがそっくり入れ替わり、信頼性で高い評価を得たサン・マイクロシステムズが1位になった。2位は日本HP、3位はNECである。これら3社は、信頼性や性能に対する満足度を前回より向上させ、上位進出のきっかけとした。

 メインフレームとオフコンの製品分野は、上位陣が安泰。それぞれ日本ユニシスと日本IBMが首位を守った。

 日本ユニシスは磁気ディスク装置の分野でも1位。前回首位のEMCジャパンは回答数が少なく、ランキング入りの条件を満たせなかった。

 ハードウエア関連サービスでは、パソコン・サーバーの首位がNECから日本ユニシスに交代したことを除けば無風。UNIXサーバーで伊藤忠テクノサイエンス(CTC)が初めて表彰台に登ったのが目を引いた。

パワードコムが僅差で戴冠

 新たにネットワーク・サービスの満足度を調査した。対象は企業の中継網に利用するサービス。ADSLに代表されるインターネット接続サービスやモバイル関連サービスは除外した。

図3●新たに調査したネットワーク・サービスの順位表。企業名横の数値は満足度の点数(100点満点)

 IP-VPNや広域イーサネットといった新型サービスと、専用線やフレーム・リレーなどの旧型サービスに分けて、集計したところ、パワードコムと日本テレコムがそれぞれの分野のトップに立った(図3[拡大表示])。全体的にNTTグループは低調だった。NTT東日本が新型サービスで3位、NTTコミュニケーションズが旧型サービスの2位に、辛うじてくい込んだ。

 ソフトウエア関連は波乱の連続。オープン系のRDB(リレーショナル・データベース)ソフト、Webアプリケーション・サーバー、ERPパッケージ(統合業務パッケージ)の3分野で首位が交代した(図4[拡大表示])。

図4●ソフトウエア関連5製品6分野の順位表。ウイルス対策ソフトは今回新たに調査した。企業名横の数値は満足度の点数(100点満点)

 オープン系RDBソフトは、マイクロソフトが久々に表彰台の最上段に登った。前回首位の日本IBMは回答数が基準に2件足りずランキング対象外。

 Webアプリケーション・サーバーは、日本IBMが念願の首位。2位のNECを0.2ポイント差でかわした。前回首位のサン・マイクロシステムズは、回答数が足らずランキング対象から外れた。

 ERPパッケージ分野は、エス・エス・ジェイ(SSJ)が富士通を0.3ポイント上回り、1位になった。SSJは昨年6月、人事給与モジュールを含むERPパッケージ「SuperStream-CORE」を投入したことで、初めてランキング対象になった。会計モジュールしかなかった前回は、参考値扱いとしていた。

 新規分野であるウイルス対策ソフトは大手3強の戦いをトレンドマイクロが制し、初代王者のベルトを巻いた。

 グループウエアではサイボウズが4連覇を飾った。

第9回顧客満足度調査の方法

 今回の調査は中小から大手企業に至る1万2315社の情報システム部門を対象に実施した。調査対象の条件は前回と同じ。すなわち新興市場を含む、全国の証券取引所に上場している企業、および年間売上高100億円以上(流通業は200億円以上)の未上場企業である。

図●回答企業のプロフィール(従業員数別、業種別)

 調査期間は2004年5月6日~5月21日。有効回答数は1617社で、回収率は13.1%。回答企業の従業員数別、業種別の内訳は右に示した。

 調査では、各製品やサービスに対して、11の項目別に満足度を質問した。ユーザー企業には、利用している製品やサービスの提供会社を最大3社まで選んで回答してもらった。

 回答・集計方式も前回と同じ。回答は4段階(満足=4、やや満足=3、やや不満=2、不満=1)で評価してもらった。項目別の満足度は、各回答をそれぞれ100点、66.7点、33.3点、0点に配点し、100点満点に換算した。

 各設問の回答を総合した満足度は、各項目の満足度を重視度の割合に応じて加重平均し算出した。重視度は、製品やサービスごとに「特に重視している項目」を2~3個選んでもらい、回答企業数の割合を重視度とした。