中部電力が基幹系システムの大がかりな再構築に乗り出した。経理・資財・勤怠管理といった事務システムや工程管理システムなど合計で2500種類ものアプリケーションを,70台のUNIXサーバーと1万6500台ものWindows2000クライアント・パソコンを組み合わせた環境下で刷新する。大規模な分散システムを効率的に開発・運用するために,アプリケーション開発にJavaを全面採用するとともに,2種類のディレクトリ・サービスを使い分けるなど各種の工夫をこらす。全システムの完成は2005年4月を見込む。
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図1●中部電力の情報システム再構築計画 |
今回再構築するのは,同社の基幹業務システムのうち,オフコンで分散処理していた部分。リプレースも含めて,新たに約70台のUNIXサーバー(HP-UX搭載機)を2001年4月から導入し,約100台ある既存のオフコン(三菱電機と東芝製)をリプレースする。狙いは,「運用管理を容易にしたり,リアルタイム性を高める」(山田健史情報システム部オープン化推進グループ副長)ことである。
約3000台あったオフコンの専用端末も撤去し,Windows2000パソコンに切り替える。このパソコンから基幹系システムだけでなく,インターネットや電子メールといった情報系システムも利用できるようにする。
システム基盤の整備については,今年9月からクライアント・パソコンのリプレースに着手する。その後2003年4月までかけて,計1万6500台のWindows2000パソコンを導入する(台数にはOSだけを入れ替えるケースを含む)。同時に,これらのクライアントを管理するためのパソコン・サーバー(Windows2000 Advanced Server搭載機)を計192台導入する。
基幹系システムが稼働するUNIXサーバーや,イントラネットおよび電子メール用サーバー(HP-UX搭載機)は「Netscape Directory Server」と呼ぶディレクトリ・サービスを使って管理する。これとは別に,パソコンを管理するためにWindows2000が備えるディレクトリ・サービスである「Active Directory」も活用する(図2[拡大表示])。
エンドユーザーによるログインの手間を軽減させるために,いわゆる「シングル・サインオン」を実現する。二つのディレクトリ・サービスを標準のディレクトリ・アクセス仕様である「LDAP(ライトウェイト・ディレクトリ・アクセス・プロトコル)」を使って連携させる。ユーザーはActive Directoryドメインに一度ログインするだけで,そのユーザーが利用可能なすべてのアプリケーションや,プリンタやファイル・サーバーといったネットワーク資源を利用できるようにする。
Netscape Directory Serverで統一せずActive Directoryも採用するのは,「1台のパソコン上で基幹業務システムも含めた全システムを利用するに足りる,セキュリティや管理効率を確保するのが狙い」(情報システム部オープン化推進グループの林昌徳氏)。そのため同社は,Active Directoryによって実現するユーザー管理機能「グループ・ポリシー」を利用する。
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図2●中部電力の新情報システム基盤の概要。基幹業務システムやイントラネット,オフィス・アプリケーションなどを,すべて同じクライアント・パソコンから利用できるようにする。さらに,Active Directoryのドメインにログインするだけで,すべてのシステムやネットワーク資源を利用可能にする「シングル・サインオン」を実現する |
一方,アプリケーションの開発言語としてJavaを選択するのは,「アプリケーションのバージョン管理や,プラットフォームごとの動作検証などにかかる手間を軽減するため」(林氏)。Visual Basicなどの開発言語と比較検討した結果,「Java以外の言語は言語自体のバージョンが上がった場合,バージョン管理の手間が大きい」(同)と判断した。Javaアプリケーションはサーバーに置き,これをクライアントにダウンロードして使う。このため,アプリケーションの配布や変更が簡単になる。
中部電力はJavaによる開発を効率化するため,Javaのソフト部品を集めた「部品庫」を整備する計画だ。「ある程度汎用的なソフト部品をカテゴリごとに蓄積して,開発者がWebブラウザから検索し,再利用できるようにする」(林氏)。ソフト部品のカテゴリとしては,エンドユーザーのログイン履歴管理や通信履歴管理といった通信系部品,アプリケーション画面のGUI用部品,アプリケーションごとのコード変換用部品など,7~8カテゴリを予定している。
複数のハード,ソフト製品を使うマルチベンダー方式になるため,システム基盤については,三菱電機にサーバー関連のハード/ソフトの技術検証を担当させる。ソフト開発環境についても,とりまとめをするベンダーを選定する予定である。