コーセーは,インターネットを通じた販売事業を次なる成長分野とにらみ,ネット販売専用の化粧品ブランド「カルテ」を立ち上げた。敏感肌用の商品に的を絞り,収益の拡大を図る。カルテのシステムにはLinuxサーバーを採用。新ブランドの立ち上げにかかるコストを低く抑えた。さらに既存の受注システムの統合や,原本性を確保できる文書管理システムの構築なども進めている。
1998年,1999年と2年連続で販売金額が前年割れとなっている化粧品業界の中で,売上高第3位のコーセーが着実に業績を伸ばしている。1998年度の連結売上高は前年度比4%増の1378億円。1999年度も横ばいの1378億円を保った。2000年度は同2%増の1410億円を見込む。
コーセーの業績拡大を支えている事業戦略の一つが,「ブランドマーケティング」と名付けたマーケティング戦略である。販売形態や販売チャネル,顧客の年齢などを軸に市場を絞り込み,それぞれの市場の特性に最も適した商品を投入していくというものだ。販売形態には,店頭でアドバイザが顧客の肌の具合を確かめながら販売する「カウンセリング販売」と,棚に陳列された商品を顧客が自分で選ぶ「セルフセレクション販売」がある。販売チャネルは専門店,百貨店,薬局・薬店,バラエティ・ショップなど多様だ。
例えば,高級化粧品ブランド「プレディア」は,販売チャネルを軸に市場を設定している。徹底したカウンセリングときめ細かな顧客管理を実践できる専門店だけに販売ルートを限定した。一方,年齢層を軸に市場を絞り込んだブランドに「ヴィセ」がある。18~24歳の女性をターゲットにした,口紅などのメークアップ商品だ。ヴィセは百貨店,量販店,薬局・薬店と幅広いチャネルで販売する。
ネット販売専用の商品を開発
こうしたマーケティング戦略の一環としてコーセーが2000年9月に立ち上げた新ブランドが,インターネット販売専用の「カルテ(http://www.carte.co.jp/)」である。「インターネットを通じた販売は,高い成長性が期待できる。ネット上での女性のショッピング経験も急速に増えているので,化粧品にとっても有効な販売チャネルになる可能性があると判断した」(広報部広報グループの川合浩課長)。
カルテは,敏感肌の女性向けに開発した乳液や化粧水など,スキンケアにかかわる12商品で構成する。敏感肌とは,化粧品に含まれる油や界面活性剤などの成分に敏感に反応してしまう肌のこと。カルテは,こうした成分を使用しない。大学病院をはじめとする五つの医療施設から臨床データを集めるなどして開発を進めた。「インターネット上では,コンセプトが明確で,特徴のある商品でないと売れない」(同)と考え,敏感肌用の商品を専用ブランドに選んだ。
カルテのサイトにアクセスした顧客は,会員登録を行った後,適切な商品を選ぶためのカウンセリングを受ける。「物理的な刺激や紫外線をうけて,肌が赤くなったり炎症を起こしたりしますか」,「ひりひりしたり,カユミや赤みがでやすいですか」,「湿疹やカブレなどがでやすいですか」など15の設問に答えていくと,肌のタイプごとに用意された三つの商品群のうち最適なものを選択できる仕組みである。
決済手段としては,商品到着時に代金を支払う代金引き換え,郵便振替,コンビエンス・ストアでの決済,クレジット・カード決済の四つをそろえた。商品の配送はすべて,ヤマト運輸の宅配便を利用する。