中堅証券会社の丸三証券は,インターネット接続機能付き携帯電話向けの証券取引システムを再構築し,2000年12月25日から稼働させた。顧客が利用可能な携帯電話の種類を増やすのに併せて,今後の機能強化がしやすいようにシステム全体を作り直した。同社は2000年4月から,NTTドコモのiモード携帯電話向けに,証券取引サービスを提供している。だが,従来のシステムは,「約2カ月という短期間で構築したこともあり,機能を追加したり,ハードを増強する場合,サービスを全面的に停止する必要があった」(通信販売部の内藤大三企画課長)。
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図●丸三証券が再構築した,インターネット接続機能付き携帯電話向け証券取引システムの概要 Webサーバーとアプリケーション・サーバーをそれぞれクラスタ構成にして,負荷に応じて処理を振り分ける |
新システムは,Webサーバーとアプリケーション・サーバーを完全に分離し,データベース・サーバーと合わせて3層構造にした。Webサーバーとアプリケーション・サーバーは2台ずつ用意し,それぞれをクラスタ接続してある。この結果,「システムの安定性が大幅に向上しただけでなく,システムを停止せずにアプリケーションを変更できるようになった」(システム部開発二課の大谷喜洋課長代理)。
クラスタ接続してあるサーバーのうち,どちらのハードでプログラムを動かすかは,スレッド単位で決める。「将来,プロセサを増強する際に,システムの性能が直線的に向上しやすくなる」と大谷課長代理は見ている。
プログラムは,Javaによるソフト部品仕様「EJB(Enterprise JavaBeans)」に従って,完全に書き直した。機能拡張の際に,プログラムを再利用しやすくするためだ。EJBの実行を制御するWebアプリケーション・サーバー・ソフトとしては,日本BEAシステムズ(東京都港区)の「WebLogic5.1」を採用した。従来のシステムは,サーバー側で動作するJavaプログラム(Java Servlet)で記述していたため,プログラムの再利用が難しかった。
新システムは,iモードに加えて,J-PHONEのJスカイウェブと,KDDIのEZウェブからも利用可能になった。3種類の携帯電話向けコンテンツを効率よく作成するため,イーツ(東京都港区)とテンアートニ(東京都千代田区)が共同開発したWebページ作成ソフト「MoDE」を導入した。基本のコンテンツをXMLで記述しておくと,接続を要求してきた携帯電話の種類をMoDEが自動的に判別し,コンテンツを適切なデータ形式に変換して,送出してくれる。