2000年度の連結売上高,経常利益がともに前年度比倍増する見通し。事業開始後わずか15年で連結売上高1000億円超を見込む有力企業がキョウデンだ。一般的な知名度はほとんどないが,他社にはできない短納期を実現する情報システムを武器に,「プリント基板の試作」というニッチ分野に特化,急成長してきた。2001年度には,製造業で今最も注目を集めている業態「EMS(電子機器製造請負)」に本格進出する。
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図1●キョウデンの業績推移 2000年度(2001年3月期)の中間決算(2000年4~9月期)で売上高が607億円,経常利益が34億円とほぼ前年1年分の業績を達成,通期では2期連続の増収増益は確実だ |
「当社の短納期製造の秘密? 特別なモノはないですよ。コツコツと作り上げてきた製造ラインと,あえて言えば工場の現場に密着した情報システムでしょう」(キョウデンの井内正明取締役)。
数ある電子機器メーカーの中で,今最も注目を集めている企業の1社が,長野県上伊那郡に本社を置くキョウデンだ。15年前,町の家電販売店だった同社は,さまざまな電子機器に内蔵されているプリント基板の試作事業に進出。以来,短納期,低コスト製造を武器に急成長を遂げてきた(図1[拡大表示])。顧客はソニーや東芝,日立製作所など大手電機メーカーから,医療機器や機械メーカーなど4000社に及ぶ。
ソーテックへの資本参加で有名に
キョウデンの一般的な知名度は最近までゼロに等しかった。しかし,1998年に経営不振に陥っていたパソコン・メーカーのソーテックに資本参加。わずか1年ほどで完全に立ち直らせたことで脚光を浴びた。2000年6月には,パソコン関連部品の輸入販売を主力とするフリーウェイを買収したことも,パソコンに詳しい人なら知っているだろう。
最近では次世代の製造業の姿の一つとされるEMS(電子機器製造請負)に進出すると表明。井内取締役らキョウデンの経営トップに講演依頼が殺到している。
だがキョウデンが注目を集めているのは,そうしたことだけが理由ではない。プリント基板をわずか1日半で試作するという“超短納期”かつ低コストの製造技術を中核とする本業の強さが,最大の理由だ。これらは日本の電機メーカーが今,最も必要としている技術の一つである。
では井内取締役が語る「短期製造を可能にする情報システム」とは,一体どんなものなのか。結論を言えば,「ほぼパソコンだけで構成したシンプルなシステム。しかしキョウデン社内で発生するあらゆる情報を詳細に管理し,現場で情報を生かす機能を持つ」ということになる。