世界規模でビジネスを展開する企業にとって,拠点間を結ぶネットワークは生命線だ。とくに最近は,十分な通信速度と信頼性を低コストで確保することに加え,ニーズに応じて素早く通信能力を増強したり接続拠点を追加するなどの“機動性”が求められる。ホンダは全世界のネットワークを再構築するにあたり,これらの点を重視して,自社で構築していた従来の通信網を通信事業者のサービスに全面的に切り替えた。

 ネットワーク時代は,経営判断のスピードを速め,その判断にもとづく事業展開をできるだけスピーディに遂行することが求められる。だが現実には,ネットワークの増強や変更に時間がかかり,ネットワーク自体が事業展開の足を引っぱる要因になることも少なくない。とくに,自社で導入した通信機器と専用線などを使って構築したネットワーク(自営網)をもっている企業は,この問題で頭を痛めているケースが多い。

 これまで,音声およびデータ通信のネットワークを,海外を含めすべて自営網として構築していたホンダ(本田技研工業)も,その例に漏れない。「ネットワークを大量のデータが流れるようなアプリケーションを追加すると,ハブ注1)となる事業所の通信設備を増強したり,設定を変更する必要がある。国内の場合で,準備に3~6カ月,切り替え作業に半人・日から数人・日の工数がかかっていた」と,白鳥博之システム企画室グローバルセンター チーフは説明する。

 もっと深刻な問題は,ネットワークに変更を加える際に,ハブや関連する事業所の通信設備を一時的に停止しなければならないことだ。「当社の場合,販売店と研究所では休日が異なるなど,切り替えを実施するための日程調整が難しい。現実には,年に3回の長期連休しかチャンスがなく,その期間にネットワークの更新作業が集中していた」(白鳥チーフ)。

外部サービスの採用で機動性を向上

図1●ホンダの新しいグローバル通信ネットワーク「Integrated Network Service 21」の基本構成
世界を欧州,アジア大平洋州,米州の3地域に分け,各地域の中核拠点をグローバル・バックボーンで接続している

 ホンダは,こうした問題を解決してネットワーク運用の機動性を高めようとしている。そのために,現在,構築中の新しいグローバル通信ネットワーク「Integrated Network Service 21」で,全面的に通信事業者のネットワーク・サービスを利用することにした。外部のサービスを利用すれば,通信設備の増強や設定変更はその事業者に任せられるからだ。切り替え作業の日程調整に悩む必要もなくなる。

 Integrated Network Service 21は,同社が全世界にもっている事業所,現地法人,関連会社,ディーラ,部品仕入先などを結ぶ大規模ネットワークである。「スピーディでグローバルに展開される21世紀のビジネスに対応できること」を構築目的に掲げている。

 Integrated Network Service 21では,世界を欧州,米州,アジア大平洋州の3地域に分け,それらの中核拠点を「グローバル・バックボーン」と呼ぶ基幹ネットワークによって相互に接続する(図1[拡大表示])。各地域のネットワークは,それぞれの中核拠点を中心に構築する。

(中村 正弘)