安価で高速なネットワーク・サービスが登場してきたことで,情報システムを構築する際の“地理的な制約”が解消しつつある。複数の拠点にシステムを分散配置する必要がある場合でも,各拠点をネットワークで高速に接続すれば,1カ所に集約したときと同じようなシステムを構築できるからだ。富士ゼロックスは国内4カ所に分散配置したマーケットプレイス用のシステムを「IP-VPN」で接続し,運用コストの大幅な節減に成功した。

 「本当は,すべてのシステムを1カ所に集約しておきたかった。さまざまな事情で複数の拠点に分散させることになったが,結果的にはシステムの運用コストを大幅に節約できた」。こう語るのは,富士ゼロックスでマーケットプレイス用のシステムを企画している,同社e-コマース推進部システムグループの菅野透氏である。

 この1~2年の間に,大規模データセンターや安価で高速なネットワーク・サービス注1)を提供する事業者,ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)注2)などが続々と登場し,情報システムを取り巻く環境が大きく変化している。従来は,「一つの拠点にシステムを集約したほうが,分散させるよりも運用コストを安く抑えられる」というのが常識だった。しかし現在は,ネットワークを活用することにより,この常識にとらわれずにシステムを構築できるようになった。

 実際,富士ゼロックスは5月下旬に稼働を予定しているマーケットプレイス用の新システムを,取引用システム,受発注管理システムといった機能ごとに分割。東京都内の3カ所と神奈川県内の1カ所の合計4拠点に分散配置して,各拠点を「IP-VPN注3)」で接続することに決めた。

稼働後1年で早くもシステム刷新

 富士ゼロックスは,パソコンやプリンタなどのオフィス用品を対象にした「x-plaza(クロスプラザ)」と呼ぶマーケットプレイスを2000年4月から運営している。

 x-plazaの特徴は,売り手企業と買い手企業との間で直接取引をしない点にある。富士ゼロックスは単に仲介役となるのではなく,同社がいったん売り手から商品を仕入れて,買い手に納める形をとる。これは,参加企業が新規の取引先との間でも安心して売買ができるようにするためだ。商品代金の支払いと請求は,富士ゼロックスが各社と個別に契約した価格に基づいて処理する。

 例えば,富士ゼロックスが買い手企業A社からパソコンを受注すると,売り手企業B社に該当商品を発注。B社から富士ゼロックス向けの契約価格でパソコンを仕入れた後,一定の利益を上乗せしてA社に販売する。ただし,富士ゼロックスは実際の物流には関与しない。商品は売り手のB社から買い手のA社に直接配送される仕組みだ。

 富士ゼロックスは,このx-plaza用のシステムを稼働後わずか1年で刷新することにした。現行のシステムでは思うように参加企業が増えなかったからである。2000年4月当初,x-plazaの参加企業は10数社だった。富士ゼロックスは2000年末までに,参加企業数を100社に拡大する目標を立てていた。だが,現在の参加企業数は目標に遠く及ばない約20社にとどまっている。

 x-plazaの現行システムでは,買い手企業はWebブラウザを使ってインターネット経由で商品を注文できる。だが,売り手企業は受注確認や納期回答をするために自社の受注管理システムとx-plazaのシステムを専用線で接続する必要があった。つまり,売り手企業がx-plazaに参加しづらいシステムだった。

 そこで富士ゼロックスはシステムの刷新を決断。売り手企業も買い手企業と同様に,Webブラウザを使ってx-plazaで取引できるようにした。専用線を敷設しなくてもよい分,売り手企業がx-plazaに参加する際の“敷居”が低くなるわけだ。

(栗原 雅)