小森 博司氏 コンパック コンピュータ カスタマーサービス推進本部
第二カスタマーサポート本部 第二ナレッジセンター
逆引き情報は最上位で動的更新
A社のようなクラスレスIPアドレスを使ったサブネット化は,IPv4アドレスの枯渇問題などから,一般的な手法である。よく似た例としては,OCNやODNなどのインターネット接続サービスもある。一つのクラスCアドレス空間を,企業は複数部署ごとにサブネット化し,プロバイダは複数企業ごとにサブネット化しているわけである。A社のネットワークは,クラスCのアドレスを,64個のIPアドレスを持つ4個のサブネットに分けている。4個のサブネットは,それぞれ「192.168. 0.0/26」,「192.168.0.64/26」,「192. 168.0.128/26」,「192.168.0.192/26」である(図1[拡大表示])。
「192.168.0.2」を逆引きする際は,まずDNSサーバー「D」に問い合わせる。DNSサーバーDは,最初の3オクテットで示される「192.168.0/24」のDNSサーバー,すなわち「0.168. 192.in-addr.arpa.」ゾーンを管理するDNSサーバー「E」に問い合わせる。すると,「2.0.168.192. in-addr. arpa.」が「2.a.0.168.192.in- addr.arpa.」の別名であることと,「a.0.168.192.in- addr.arpa.」のDNSサーバー「F」のアドレスを知る。DNSサーバーDはDNSサーバーFに対して,「2.a.0.168. 192.in-addr.arpa.」のFQDNを問い合わせて結果を得る。
そこでA社は,サブネットごとのDNSサーバーではなく,ドメイン階層最上位のDNSサーバーで動的更新を許可し,社内の全ホストの逆引きゾーンを持たせることにして解決した(図2[拡大表示])。逆引き情報の管理をサブドメインのDNSサーバーに任せていた従来のネットワークの構成を変更したのである。サブネットごとの正引きゾーンは,図2のように今まで通りでも構わなかったが,最終的には混乱を避けるために逆引き同様に最上位のDNSサーバーに管理権限を持たせた。
DNSの設定変えホスト名を強引に登録
逆引き情報の動的更新が可能になったが,まだ問題は残っていた。WindowsNTドメインで使っていたホスト名をDNSサーバー「BIND」へ動的に登録する際にエラーが出て登録できなかったのだ。原因は,Active Directoryのドメイン・コントローラが,本来のDNSではホスト名として使えない文字「_」(アンダー・スコア)を動的に登録しようとしていたことである。
しかし,Active Directoryを動作させるためにはどうしても,ホスト名「gc._msdcs」のドメイン名にIPアドレスをマッピングするAレコードをDNSに登録する必要があった。gc._ msdcsのIPアドレスを引けないと,グローバル・カタログ・サーバーを見つけられないからである。
そこでA社では,BIND 8の設定ファイル「named.conf」を変更し,各ゾーンのデータベース設定において,名前のチェック・レベル「check- names」を「warn」や「ignore」に落として回避した。これにより,gc._msdcsのAレコードが登録されるようになった。