村嶋 修一氏 ライプ IT技術統括部長
ルーターをベースとする企業ネットワークを運用する際に重要になるポイントを,筆者が実際に経験した事例を基に,(1)回線の選択,(2)運用体制の確立,(3)ルーターの維持・管理,(4)セキュリティ対策の4項目に分けて紹介する。第1回は,運用しやすいネットワークにするための構築法に焦点を当てる。
ルーターをベースとした広域ネットワークの設計では,ネットワークに求める要件をどこまで的確に把握できるかが重要になる。要件を読み違えたり,無計画にルーターを配置した場合には,後々その修正に苦労することになる。まず,第一歩は適切な通信サービスを選択することから始まる。
サービス選択に回線速度は不可欠 SIの協力でまずトラフィック分析
広域ルーター・ネットワークの設計では,まず拠点ごとに必要な回線速度を割り出す。利用環境を把握し,その上で,できるだけシンプルなネットワーク構成を考えることが重要だ。
A社は,全国に35の支店と三つの工場,二つの物流センター,900の販売店を持ち,製造から販売までを一貫して運営する企業だ。これまで同社は,本社のホスト・コンピュータを中心に経営分析システムを構築し,各拠点からダイヤルアップ接続で情報を収集し,分析する体制を敷いていた。
だが,各支店と本社の間は1日数回に分けて接続する収集体制だったため,全社レベルの情報共有・伝達が迅速ではなかった。この問題を解決するため,A社は,経営システムをクライアント・サーバー型に切り替え情報系システムと分析系システムを構築。ネットワークも支店と販売店を本社に直接つなぐルーター中心の構成に変更することにした。