稲荷 幹夫氏 サイバード取締役技術部長
監視をエンド・ツー・エンドに広げる
B社は,従来のWebサイト内の監視に加え,(1)携帯電話事業者のゲートウエイまでのレスポンス・タイムのpingによる監視,(2)携帯電話からの監視――を追加した。ゲートウエイまでのレスポンスは,B社のWebサイトを設置したデータ・センターから監視する。監視は自動化し,レスポンス・タイムが通常の3倍以上かかった場合には,システム管理者に警告を発するように設定。これにより,データ・センター内のネットワーク機器やプロバイダのネットワーク障害を切り分けられるようにした。
携帯電話からの監視はデータ・センターのオペレータに依頼した。定期的にモバイル・サイトにアクセスすることで,システム全体の動作を確認。アクセスできなかった場合には,ほかのモバイル・サイトにアクセスを試みることで,携帯電話網に問題がないかをチェックするよう手順を定めた。
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図3 システム監視では検出できなかったC社のトラブル C社ではコンテンツのチェック漏れのため,特定の端末からアクセスできない状況が発生した。このようなトラブルはシステム監視では検出できない。C社ではコンテンツのチェック体制を充実させることで対処した。 |
監視では見つからない不具合が発生
画像や音楽などの有料コンテンツをモバイルECサイトで提供するC社は,システム監視には万全を期していた。Webサイト内だけでなく,携帯電話からも定期的にアクセスして,異常をチェックする体制を整えていた。ところがある日,エンドユーザーから,画像が正常に表示できないというクレームが殺到。しかし,システム監視では何も異常は見つからなかった。異常が発生する携帯電話機は,特定の機種に限られていた。実際にその機種で調べてみると,確かに正しく表示できない。原因はコンテンツと機種表示機能の不整合にあった(図3[拡大表示])。
モバイル・コンテンツでは,機種ごとの画素数や色数をはじめとする表示能力の差が大きい。このため,元となるコンテンツから,表示能力に応じて数種類のコンテンツを生成するツールが用意されている。それでも最終的には幾つかの代表的な機種で,表示内容の確認が必要になる。
C社もツールによって複数のコンテンツを作成し,コンテンツ作成者が表示能力をチェックしていた。しかし,正しく表示できなかった機種は,コンテンツ作成者がチェックを怠っていた。
チェック体制の見直しで再発防止
こうしたトラブルは,システム監視では未然の防止はおろか検出も困難。このため監視以外にコンテンツのチェック体制も整えておく必要がある。
C社は,トラブルを機にコンテンツのチェック体制を見直した。多忙を極めるコンテンツ作成者に主要機種の表示チェックを任せるのは無理があると判断したのである。
C社のコンテンツには,音楽や画像も含まれている。このため,音楽や画像の内容に関する正しい知識も必要になる。C社は,コンテンツと一緒にデモ・テープや画像ファイルも送るようにして,チェックを外注した。