北岡 一彦氏 NTTコミュニケーションズ ソリューション事業部ITビジネス推進部 AppMasterプロダクトマネージャー
大沼 守一氏 NTTコミュニケーションズ ソリューション事業部ITビジネス推進部 AppMasterコンサルタント
性能データを細かく分類・整理
測定可能なデータには,アプリケーション種別,プロトコル名,TCP/UDPポート番号,送受信IPアドレス,平均/ピーク通信量,レスポンス・タイムがある。B社は,(1)社内で利用しているアプリケーション・プロトコルの種類,(2)プロトコルごとの通信量,(3)各拠点のアプリケーション別通信量,(4)各アプリケーションのトラフィック特性,(5)アプリケーションごとのレスポンス――を把握したいと考えた。(1)は,帯域管理装置が実測したプロトコルやポート番号を分類した結果を整理した。中には「TCPポート番号=7000」など一般的でないポート番号を使っていたために特定できないアプリケーションもあったが,送受信IPアドレスを特定することで判別できる。
(2)と(3)は,測定時に様々なフィルタリング・ルールを設定し分類することで情報を把握できる。例えば,システムごとに分類するなら,TCPポート番号とサーバーIPアドレスでフィルタリングしたうえで,スループットやレスポンスを測定する。拠点ごとのデータは,ネットワーク・アドレスでフィルタリングして測る。
(4)は,短期間では傾向をつかめないため,数週間測定する必要があった。B社が時間や曜日ごとの特性を把握したかったのは,以前,一つのシステム障害が別のシステムのトラフィック・ピークと重なって,新たな障害を引き起こした経験があったためだ。
SLAの提供目指しレスポンスも計測
(5)のレスポンスは,エンドユーザーへのサービス品質を測る情報として使う。B社は,将来的にエンドユーザーへのSLA提供を目指し,アプリケーションごとのレスポンス管理を実施することにした。
レスポンス・タイムは,クライアント-サーバー処理の遅延時間を指す。測定方法としてはpingが一般的だが,B社は帯域管理装置のデータを使うことにした。同装置は,pingと同様の結果が出るTCPの3ハンドシェーク時のRTTに加え,アプリケーションごとのネットワーク遅延とサーバー遅延を別々に測定できるからだ。
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表1 B社はトラフィック調査結果を表にまとめてシステム設計に活用 詳細なデータを基に設計ができたため,次期ネットワークの構築作業はスムーズに進んだ。bpsはビット/秒。 |
この新ネットワークでは,各拠点の回線速度を従来と同等以上に高速化すると同時に,帯域管理装置を導入することで重要なアプリケーションの帯域確保が可能になった。ネットワークの性能管理も継続し,サーバーやネットワークのボトルネックを事前に予防したり,適切な速度に回線を高速化することなどに効果を発揮している。