PR

村嶋 修一氏 ライプ IT技術統括部長

障害対策でもセキュリティが第一

 当初は,主要拠点に予備のBBルーターを配備する案を検討した。これら拠点で設定方法を指導すれば,本社の担当者が出向かないで済む。

 しかし,この方法はセキュリティの確保が問題となった。暗号通信に必要な暗号鍵の情報を各拠点に配布する必要があるからだ。インターネットを使ってVPNを構築している以上,事故や故意で鍵情報が流出すると,セキュリティの大前提が崩れてしまう。

 設定情報をメモリー・カードで配布する案も挙がったが,メモリー・カードを送付するタイム・ラグが発生し,根本的な解決策とはならなかった。

図4 B社が採用したブロードバンド・ルーターの障害対策
拠点ごとに専任のシステム管理者を配置していないB社は,現地の社員が予備ルーターに交換し,本社のシステム管理者が遠隔操作ソフトで設定する体制を整えた。遠隔操作ソフトの動作が遅く作業時間がかかるとはいえ,本社の担当者が現地に駆けつけるよりは,迅速に復旧できるようになった。しかし,パソコンに障害が発生すれば対応できないため,ISDN回線を使った迂回路も用意した。

電話用の回線を緊急迂回に活用

 結局B社は,遠隔操作ソフトを使うことにした。遠隔操作ソフトを導入したパソコンを配備し,このパソコンを介して,本社の担当者がインターネット経由でBBルーターを遠隔操作する(図4[拡大表示])。欠点は遠隔操作ソフトのレスポンスの遅さだが,ダウン・タイムの短縮には効果的だった。

 ただし,パソコンが故障すれば対応できない。そこでB社は,電話やファクシミリ用のISDN回線を,一時的な迂回路として活用することにした。

 拠点側には,電話番号やID/パスワードなどをあらかじめ設定した予備のISDNルーターを配布しておく。現地の社員がBBルーターをつなぐLANケーブルと電話をつなぐケーブルを,それぞれISDNルーターにつなぎ替えるだけで済むようにした。

意外に多い落雷と落下事故

 遠隔操作ソフトの導入で,ダウン・タイムは大幅に短縮できた。しかし,故障報告の件数は減少しなかった。B社が各拠点で調べたところ,(1)落雷時のサージ,(2)落下しやすい場所やケーブルを引っ掛けやすい場所への設置――が主な原因だった。

 落雷時のサージは,UPSやサージ・プロテクタを導入することで防止できる。B社は比較的安いサージ・プロテクタを各拠点に配布した。設置場所の指定は,写真を豊富に掲載したパンフレットを作成して,安全な場所が一目で分かるように工夫した。