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鈴木 健氏 ネクストコム テクニカルサポート部

社内ネットワークでIP電話をうまく稼働させる最大のポイントは,音声品質の確保である。最も効果が大きいのが,音声パケットを最優先で処理するようにネットワーク機器を設定すること。ただし新しい設定方法を全社に行き渡らせないと,十分な効果が得られない。

 音声通話の品質を左右するQoSの指標には,(1)遅延の大きさ,(2)帯域が確保できるか,(3)パケット損失の程度,(4)揺らぎ――などがある。

 LANで利用するIP電話ならば,このうち主に遅延を改善するパケットの優先制御を使うだけでも,実用に耐える音質を実現できる。ただし設定上の工夫や,運用ポリシーの統一が成否を分ける。(2),(3),(4)はLANの帯域を十分に増やすことで解決しやすい。

優先度不統一から音質劣化
上位スイッチで一元指定

IP電話の品質を確保する効果的な方法は,音声パケットを「絶対優先」で転送することである。全社でこの運用方針を統一するためには,ネットワーク担当者が管理する特定の階層で,パケットの優先順位を一義的に決めてしまうのがよい。

 電機メーカーのA社は,通信コストの削減に加え,社員の生産性向上を狙って,IP電話の導入プロジェクトを発足させた。実際にその効果を確かめるため,開発部と経営企画部の2部署に所属する50ユーザーに限定して,IP電話を試験的に導入した。

 IP電話機はレイヤー2(L2)スイッチを内蔵する製品を採用。各電話機に社員が使うデスクトップ・パソコンを接続し,その上で,IP電話機は情報システム部門が管理する上位階層のL2スイッチに直結した。音声の遅延を小さくしたかったからである。

 また,管理を容易にするため,レイヤー3(L3)スイッチをまたぐ場合でも,すべてのIP電話は音声専用のVLANでグループ化した。

図1 A社はパケット優先度の設定方法を見直してIP電話の品質を改善
従来は,各VLANから来たパケットのCoS(class of service)を信用していたが,上位のレイヤー2スイッチで,「音声パケットは5,データ・パケットは0」と書き換えるよう統一。レイヤー3スイッチでは,このCoSを信頼して,DSCP(diffrentiated services code point)に一義的に書き換えるように変更した。音声パケットが必ず絶対優先されるようになり,IP電話が音質は改善した。

音声に高いCoS値を設定したが…

 最大の懸案である音声品質は,LANスイッチが備える優先制御機能で確保することにした。A社が採用するL2/L3スイッチには,パケットを「絶対優先」,「高優先」,「低優先」の3段階に分けて転送順を並び替えるキューイング機能がある。絶対優先キューに入ったパケットは,他のパケットよりも必ず先に転送される。

 パケットの優先順位は,レイヤー2ではCoS,レイヤー3ではDSCPを使って指定できる。そこでA社は,IP電話機に内蔵するL2スイッチのCoS値をデータ・パケットは0,音声パケットは5に指定(図1[拡大表示])。さらに,上位のL2スイッチは,CoS値が5以上のパケットを絶対優先キューに割り振るように設定した。これで,音声パケットの遅延は最小限に抑えられるはずだった。

 ところが実際に運用を開始すると,業務時間中に時々音が切れたり,明らかに音質が劣化する現象が起こった。ただし,発生時間に規則性はない。音質が頻繁に悪くなる日もあれば,問題が発生しない日もあった。