
コスト削減を目的としたIP電話の導入計画では,導入時の設備投資計画と導入後の費用対効果を正確に見積もる必要がある。しかし,多くの企業はPBXとデータ網を別に管理している。このため重要な比較項目も見落としがち。結果,隠れたコストを洗い出せないまま導入計画を評価しかねない。
IP電話導入でコスト増
PBXの更改費用の算入で解決
PBXは,再リースすると運用コストを約10分の1に圧縮できる。ただし,老朽化が進んでいれば買い替えが不可欠。検討段階でPBXの更改費用を見落とすと,IP電話の導入で逆にコストが増える試算結果となる。
大手機械製造業のA社は,電話関連のコスト削減を狙ってIP電話の導入を検討した。IP電話の実現方法は,(1)既存のPBXを使って事業所間通話だけIP化する「VoIPゲートウエイ」,(2)内線網を丸ごとアウトソーシングする「IPセントレックス・サービス」,(3)電話機までIP化する「ソフトスイッチ」――の3方式を検討。各方式の機能を比べて候補を絞り込んだ(図1[拡大表示])。
ソフトスイッチ方式を選択
VoIPゲートウエイは,PBXごとに細かな調整が必要で運用に手間がかかる。また既存のPBXを継続利用するため,組織変更などに伴う移設作業費を削減できない。
IPセントレックス・サービスは,提供事業者のWANサービスで音声対応の網を再構築する必要があった。さらに既存のPBXで使っている代理応答や会議電話などは,オプションで別料金のため全体でコストが増えた。
A社は,最終的にソフトスイッチの方式を選択した。理由は,(1)既存の社内ネットを音声網として共用することで,事業所間通話料を無料にできる,(2)1台当たり数千万円するPBXを撤去し,数百万円のソフトスイッチに置き換えられる,(3)電話機の移設作業費を省けると聞いていた――の三つだ(図2[拡大表示])。