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図1 A社は固定電話の移設,PHS対応,電話機能を重視
組織変更によるレイアウトの変更が頻発するA社は,電話機や配線の移設コストを抑えられるか,内線PHSを利用できるか――などを重視した。さらに,既存のPBXで利用していた電話機能を損なわないことも条件だった。
図2 導入時のコスト計画のポイントは隠れたコストの洗い出し
PBXは,再リースでコストを約10分の1に抑えて継続利用するケースが多い。PBXをソフトスイッチに置き換える場合には,電話機もIP電話機に置き換える必要がある。こうした点を見落としていたA社は,IP電話を導入した方がコストがかかるのかと考えた。しかし,各拠点のPBXを調査すると,再リースの繰り返しでかなり老朽化が進み,新しいPBXに置き換える必要があった。また,IP電話機は低価格な機種でも十分と判断した。
現在,IP電話の導入を検討する企業にとって,コスト削減は最大の導入目的になっている。しかし,導入前の設備投資費用に見落としがあったり,既存の社内ネットをそのまま利用すると,IP電話の導入で逆にコスト増になることもある。今回から4回にわたって,IP電話導入時に陥りやすい落とし穴を解説する。

 コスト削減を目的としたIP電話の導入計画では,導入時の設備投資計画と導入後の費用対効果を正確に見積もる必要がある。しかし,多くの企業はPBXとデータ網を別に管理している。このため重要な比較項目も見落としがち。結果,隠れたコストを洗い出せないまま導入計画を評価しかねない。

IP電話導入でコスト増
PBXの更改費用の算入で解決

PBXは,再リースすると運用コストを約10分の1に圧縮できる。ただし,老朽化が進んでいれば買い替えが不可欠。検討段階でPBXの更改費用を見落とすと,IP電話の導入で逆にコストが増える試算結果となる。

 大手機械製造業のA社は,電話関連のコスト削減を狙ってIP電話の導入を検討した。IP電話の実現方法は,(1)既存のPBXを使って事業所間通話だけIP化する「VoIPゲートウエイ」,(2)内線網を丸ごとアウトソーシングする「IPセントレックス・サービス」,(3)電話機までIP化する「ソフトスイッチ」――の3方式を検討。各方式の機能を比べて候補を絞り込んだ(図1[拡大表示])。

ソフトスイッチ方式を選択

 VoIPゲートウエイは,PBXごとに細かな調整が必要で運用に手間がかかる。また既存のPBXを継続利用するため,組織変更などに伴う移設作業費を削減できない。

 IPセントレックス・サービスは,提供事業者のWANサービスで音声対応の網を再構築する必要があった。さらに既存のPBXで使っている代理応答や会議電話などは,オプションで別料金のため全体でコストが増えた。

 A社は,最終的にソフトスイッチの方式を選択した。理由は,(1)既存の社内ネットを音声網として共用することで,事業所間通話料を無料にできる,(2)1台当たり数千万円するPBXを撤去し,数百万円のソフトスイッチに置き換えられる,(3)電話機の移設作業費を省けると聞いていた――の三つだ(図2[拡大表示])。