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日本旅行の「クリック・アンド・モルタル戦略」の経緯
「社員ホームページ」運営上で工夫した点
東京中央支店の山本勝也氏。「お客様からホームページについて聞かれることも多い」

過去の失敗経験を教訓に

 実は、ホームページでリピート顧客を囲い込むという取り組みは過去にもあったが、なかなかうまくいかなかった経緯がある。

 2002年春、支店ごとのホームページ開設と同時に、もう1つの営業チャネルである法人営業用ホームページを立ち上げた。大手の企業顧客向けに個別にカスタマイズしたホームページを法人営業担当者が作り、顧客企業のイントラネットにリンクして利用してもらう。顧客企業の社員の個人旅行需要を取り込むのが狙いである。

 しかし、当初約1000社との契約を見込んでいたのに、現在もまだ200~300社にとどまっている。「法人顧客の利用率を上げてもらうという目標からいっても、決して納得できる状況ではない」(砂子係長)

 企業向けホームページが軌道に乗らない主な原因は、やはり営業担当者にとって作成や更新の負担が大きすぎたこと。全国の営業本部ごとに研修会を開いてコンテンツ作成の手順を学んでもらったが、「全部の営業担当者を集めての研修は無理があった」(同)。

 企業向けホームページが停滞している反省を生かして、社員ホームページの研修はできるだけ短時間で済ませられるように設計した。作成マニュアルをイントラネット上に掲載し、各自がeラーニングで学習できるようにした。「基本的な社員ページの作成方法を誰でも約1時間で一通り学べる」というのが当面の目標だ。

社員ページは各支店の「提携先」

 ホームページを介した商品の販売システムを、日本旅行社内では「E-PARTNER」と総称している。支店ホームページや法人顧客向けホームページ、今回の社員ホームページもE-PARTNERの一環に位置付けている。

 社員ページ作成用システムは、支店ホームページ開設のときに開発した様々な機能を流用したため、「今回分の開発費は恐らく1000万円弱で済んだ。ただ、構想には1年ほどかけている」(砂子係長)。

 E-PARTNERでは、個々の社員のホームページは、社員が所属する支店ホームページのアフィリエート(提携先)に位置付けられる。社員ホームページから支店や全社のホームページにはリンクするが、逆に支店のページから社員ページにはリンクしない。リピート顧客への対応ページという本来の目的から外れてしまうためだ。

 社員ページはあらかじめ基本的なテンプレートを現在24種類、用意している。営業担当者はテンプレートを選択し、4種類ある「コラム」ごとにテキストや画像を入力したり、支店ホームページなどへのリンク先を指定してコンテンツを作成する。慣れてくれば画面の構成を変えたり、ページを階層的に複数作ることも可能だ。顧客向けにアンケートをとる機能なども提供する。

 全員にホームページ作成を義務付ける際の課題は、個々の社員をいかに動機付けるかという点だろう。メディアミックス営業部でもそのための施策を検討中だ。

社員のモチベーション向上へ

 その施策の1つは、社員の評価制度に組み込むこと。支店ホームページについては、作成・更新の担当者を各支店に1人ずつ任命しており、「支店ホームページが作成できること」はすでに社内の公認スキルになっている。同様のインセンティブを社員ページについても考えていく方向だ。

 社員ページへのアクセス状況は、イントラネットの専用画面から随時見ることができる。日別、時間帯別のアクセス数が確認できるので更新への励みになるが、あくまで参考程度にしてもらう予定だ。「ゆくゆくはホームページの見栄えやコンテンツを評価する制度も導入できるのではないか」(砂子係長)という。

 2002年度から始めた支店ホームページの運用を通じて、社内の意識も変わってきているようだ。「顧客のニーズが確実に増えていることや、ホームページは大事なのだということを認識して、理解度も高まってきている」(同)

 「自分の実績が見えるような仕掛けが欲しい」という要望は、社内で以前からあったという。「むしろ本社スタッフのほうから『早くホームページを作らせてくれ』という希望が多かった」(同)。知人・友人から旅行の手配を依頼されても結局は支店に紹介するため、自分の売り上げにはなりにくかったからだ。今回、営業社員に限らず、本社の間接部門の社員でも個人ホームページを作れるようにしている。

出張中は支店がバックアップ

 東京中央支店の山本氏は「ホームページは、自分の顧客に限定した情報を他の媒体よりも有効に告知できるツールとして使えそうだ」と期待している。

 山本氏が担当する顧客企業は化粧品会社や広告会社など約30社。数年前まで売り上げのほとんどを占めていた団体旅行は頭打ちになっており、企業内での個人旅行をいかに開拓するかが課題になっている。だが「訪問営業に行っても顧客と直に話せないことも多い。社員ページで私が今何をしているかを常に公開すれば、メールなどで連絡しやすくなるのでは」(山本氏)と期待をかける。

 山本氏はスタート前に、多少懸念していたことが2つあった。1つは、更新作業が継続できるかということ。これは「作成してみて、月に1~2回の更新なら大丈夫そうだと思った」(同)。

 もう1つは、添乗などで出張中に、自分のホームページから入ってきた予約依頼への対応である。これについては、(1)本人のホームページに加えて支店ホームページにも同じ予約の記録を残す、(2)本人と支店あてに予約確認のメールを同時に送信する、(3)支店にあるホストの予約端末から毎日出力する「予約一覧リスト」上でも確認する、というように三重の確認体制をとることで対応した。

秋山 知子 takiyama@nikkeibp.co.jp