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狙い:新車の開発リードタイムを約12カ月に短縮する
コスト:1拠点当たりで数千万円。96年以降では累計で数十億円と見られる
IT:米デルミアのデジタルモックアップ・ソフトENVISION、米SGIのOnyxなど

 トヨタ自動車は8月をメドに、「V-Comm(ブイコム)」と呼ぶ設計・製造支援システムをタイや台湾、インドネシア、オーストラリアの現地工場に展開する。

 V-Commは自動車部品の3次元CAD(コンピュータによる設計)データを設計や生産技術部門、国内外の工場との間で共有することで、新車の開発リードタイムを短縮するためのシステム。開発投資額は、高性能グラフィックス・コンピュータや映写用スクリーン設備を含めて、1拠点当たり数千万円である。

 96年4月から日本と北米、欧州に展開する設計・製造拠点の20数カ所に導入してきた。東南アジアとオセアニアに拡大することで、主要拠点をほぼ網羅する。これによりグローバル拠点を結んで、設計や製造プロセスを効率化する体制が整う。

 すでにトヨタは、すべての主要部品の設計にV-Commを活用した乗用車「bB(ビービー、2000年2月発売)」において、経営トップによるデザインの承認から、量産開始までのリードタイムを約12カ月に短縮できた。日本車の場合、一般的には18カ月ほどかかる例が多く、約半年も短い。

 V-Commのグローバル展開により、適用車種を増やすとともに、他の新車についても開発リードタイムを12カ月に近づけていく考えだ。

世界の拠点をほぼ網羅する

実物大の模型を廃止

 V-Commは車体と部品の3次元CADデータを使って、120インチの大型スクリーン上で仮想的に車体に部品を取り付ける。それにより、部品同士の干渉や工場での組み立てのしやすさなどを、複数の部門が事前に、同時併行に検討していく。「検討結果を設計部門にフィードバックすることで、早い時期に部品の設計を適切に変更できる」(車両生産部の根岸孝年・車両情報管理部長)。この結果、bBの開発時にはクレイ(粘土)や木材を使った実物大の模型(モックアップ)の作成を全廃できた。

 工場の製造ラインにおける作業手順やロボットの配置などを事前に検討するデジタル・ファクトリーも、V-Comm上で実施している。トヨタが来年に稼働させるフランス工場の製造設備は、「V-Commを全面的に利用して、設備の配置を決定した初のケースだ」(根岸部長)。

ナレッジ・システムとしても活用

 V-Commは、設計や製造作業を効率化するナレッジ・マネジメントシステムとしても活用している。

 様々な部門が同じデータを共有することで、異なる視点から設計が適切かどうかを検討して、その評価や発見した不具合をウェブ・ブラウザ経由でトヨタ本社のサーバーに蓄積。設計担当者が不具合の症状や部品名称などで検索して、設計に生かしている。

 このナレッジ・データベースは、トヨタ社内だけでなく部品メーカーなどの取引先も自社製品の関連情報に限って、閲覧できるようにしている。

安部 俊廣 toshiabe@nikkeibp.co.jp