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 松下電器産業は、サプライチェーン・マネジメント(SCM)を推進することで、2003年度末までに家電と電子部品の合計で約3000億円ある全世界の製品在庫を半減する方針だ。

 今年度から3年間かけて実施する全社革新プロジェクトである「創生21計画」の重点施策として、合計で約320億円を投入し、SCMに必要な情報システムを整備する計画である。

 具体的には、i2テクノロジーズ・ジャパン(本社東京)のSCMソフトであるi2 TradeMatrixを導入して、製品の需要を予測する。これに基づいて工場の生産計画や販売業務を、現行の月単位から週単位で、柔軟に見直せる体制を構築する。

 これにより、現在の在庫水準を半分に抑えても、市場における需要の変動に対応できると判断した。家電と電子部品の製品在庫はともに平均で約1500億円あるが、家電は約785億円、電子部品については約700億円をそれぞれ削減する。

 SCMの実現に欠かせない資材や部品のネット調達も進める。松下電器は昨年から、大口取引先である約3000社を対象にしたネット調達を実施。すでに金額ベースで全体の92%を、ネット調達に移行している。

今年度中に100%のネット調達実現

 今年度中は、さらに約30億円を追加投資してウェブEDI(電子データ交換)などシステムの整備を進めることで、ネット調達の比率を100%に引き上げる考えだ。

 実現すれば、資材などの調達経費が年間で約50億円、部品などの在庫についても約300億円を削減できると見込んでいる。

 製造業のコア・コンピタンスである“もの作り”の改革も進める。家電などの設計・開発プロセスに3次元CAD(コンピュータによる設計)やPDM(製品データ管理)などのシステムを活用する。

 これによって事業部など部門の枠を超えて、設計に関するデータを共有して、設計・開発業務を同時並行に進められる、コンカレント・エンジニアリングにつなげる。

 来年9月までには、部門ごとに設定するモデル製品に関してコンカレント・エンジニアリングの手法を確立して、これをほかの主力製品に応用できる仕組みを固める考えだ。

 松下電器はこの創生21計画を実現するために、3年間の累計で1400億円のIT投資を実施する。

グループ挙げて一斉に改革を断行

 一連の改革は松下電器だけでなくグループ会社を挙げて取り組む。例えば、カーナビゲーション・システムや光ディスク・ドライブなどを手がける九州松下電器は、やはりi2テクノロジーズのソフトを利用して、製造・販売を週次で実施するSCMを松下電器本体よりも一足早く、今年度中に実現する考え。

 この結果、受注から出荷までのリードタイムを全製品において4週間以内に抑えたうえで、製品在庫を11日分に半減できるという。

 九州松下の投資額は今年度が約40億円で、2003年度までの累計で約130億円を見込んでいる。九州松下は「必要な情報インフラは松下電器グループで共同利用する。当社は独SAPのERP(統合業務)パッケージであるR/3の導入などを終えているため、比較的、投資額を抑えながらSCMを導入できる」(坂井 社長)としている。

安倍俊廣 toshiabe@nikkeibp.co.jp

記者の視点:一連の改革で松下電器は、中村邦夫社長の言う「超・製造業」への脱皮を目指す。ただ総花的な印象はぬぐえず、最大のライバルであるソニーと差異化できているとは言い難い。今後の実践が勝負を決するだろう。