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 日本航空(JAL)は10月から、米ボーイングと契約を結んでいた航空機用保守部品に関するサプライチェーン・マネジメント(SCM)プログラムである「GAIN(グローバル・エアライン・インベントリー・ネットワーク)」を、本格的に開始する。

 GAINは、JALが自社で実施している部品の調達や在庫管理などを、ボーイングに一括して代行させるもの。JALの部品倉庫に納品させた在庫をボーイングの資産として扱い、JALは使用した分の代金だけを支払う、VMI(ベンダー・マネージド・インベントリー)という在庫管理手法を採用している。JALは、今後5年間で約80億円分の部品在庫をボーイングの資産に切り替えていくため、JALの部品在庫はその分だけ削減できる。

 今年6月には、JALに続いてKLMオランダ航空もGAINに関する契約を締結したが、実際に運用を始めるのはJALが初めてだ。

ボーイングにも大きなメリット

 航空機は、飛行時間や離発着回数などに応じた定期検査が義務づけられており、その内容は法律や社内ルールで決まっている。

 だが「どのような修理や部品交換が必要かは、実際に作業をしないと分からない。部品の劣化や摩耗は、飛行時間などだけでは判断できないためだ」(整備本部の日吉和彦マネジャー)。

 そのため、これまでJALは安全を優先して、部品の在庫水準を高めに設定していた。

 そこで、10月以降はJALがボーイングに検査スケジュールや部品の使用実績データなどをネットワーク経由で送信する。ボーイングは、これらのデータに基づいて部品の需要を予測して、必要な量の部品をJALの倉庫に納品する。

 この体制はボーイングにとってもメリットが大きい。航空会社からの急な発注に備えて、仕入れ先の部品メーカーから事前に購入していた部品在庫の削減につながるからだ。

 このためにボーイングは世界の航空会社にGAINへの参加を働きかけており、JALとKLMオランダ航空に加えて、国内では全日本空輸や日本エアシステムに参加を打診している。

対象とする部品を徐々に拡大

 JALは現在、取得価格ベースで約400億円に達する約20万点の部品を、成田と羽田両空港内の整備場に保有している。今回、GAINの対象に切り替えるのは、このうち「ボーイング経由のほうが安く調達できると判断できた約80億円相当の約7万点の部品」(日吉マネジャー)。

 具体的には、空調用エアフィルターやボルト、ナットといった使い切り型の消耗部品から適用する。

 これ以外にJALは、修理によって再利用できる「循環部品」を1200億円分保有している。この循環部品や消耗部品については、ほかの航空会社の参加が増え、一括購入によって調達コストが引き下げられることが確認できた時点で、対象に加える考えだ。

安倍 俊廣 toshiabe@nikkeibp.co.jp

記者の視点:要するにVMIによる在庫管理のアウトソーシングである。だが現状では“旨味”は少ない。他の航空会社や部品メーカーをさらに巻き込み、業界標準のサプライチェーンに拡大する必要がある。