図●ASPへの移行でコスト削減 [図をクリックすると拡大表示]

 松井証券は今年5月をメドに、為替取引など一部を除いた基幹業務システムを、ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)形式に全面移行し、運用費の削減を図る。4~5年後には年間10億円前後を削減できる見通しだという。現在はシステム開発・運用に年間約20億円かかっており、半減できる見込みだ。
 採用するASPは、日本フィッツが開発・運用するサービス。この1月に契約を結んだ。日本フィッツと5年契約を前提に話し合い、契約料金を本誌推定で1年目は20億円前後、4~5年目は10億円未満となるように決めた模様。

 松井証券はこれまで、注文受け付けを管理する営業系システムはフィオシス(本社東京、昨年12月にファイテックから社名変更)に開発を委託して自前で運用。口座管理などを行う後方事務系のシステムは、大和総研(本社東京)がASP形式で提供する「ソナー」というサービスを利用していた。
 新たに採用するASPはこれらを統合するとともに、機能強化を狙ったものだ。例えば、約定から決済までの期間を従来の3営業日後から翌営業日に短縮する「T+1決済」制度に対応できるようになる。大和総研のソナーは、まだT+1に対応していない。

 さらに、営業系と後方事務系で頻繁にデータをやり取りできるようになる。「顧客の売買動向を分析して、個別銘柄が現物売りされているのか、信用売りされているのかといった加工情報を数分遅れで顧客に提供できるようになる。この夏にも情報提供を開始する」(松井証券)。

運用委託先の立場も考慮して選択

 こうした費用削減や機能強化といった利点が、システムの移行を決断した理由だが、松井証券にとって実はもう1つの大きな意味がある。それは、大和総研の親会社が証券大手の大和証券であることに起因する。
 「松井証券は、個人売買代金では昨年中にすでに大和証券を抜いたと判断している。それだけに大和総研が親会社の意向でASPの料金を値上げする可能性が心配だった。しかも既存システムをT+1に対応するのには約100億円かかると聞いている」(関係者)。

 一方、日本フィッツは解散した山一証券の情報子会社に在籍したスタッフが設立した独立系システム会社。松井証券は昨年から、次期パートナー候補として検討してきたという。日本フィッツが提供する「トレードワン」は、99年秋から昨年春にかけて開発したソフトでT+1対応を終えているし、すでに他の中小証券会社で稼働実績もある。

 ソフト部品を組み合わせた構成なので、機能の付加が容易なことも特徴。ASPといっても共同利用ではなく、「松井証券向けは処理量が大きいので専用サーバーで運用する。開発の制約はない」(日本フィッツ)という。

井上 健太郎 kinoue@nikkeibp.co.jp