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アスクルが進めている仕入れの業務改革が効果を上げ始めた。昨年9月に導入した需要予測システムにより、欠品の発生率を半減。この5月からは取引先との情報共有を進め、さらなる改革を視野に入れる。

シンクロマートで取引先との連携を強化

 オフィス用品通販大手のアスクルが、昨年から手がけているSCM(サプライチェーン・マネジメント)の改革を軌道に乗せ始めた。

 SCM改革の原動力となっているのは、昨年9月に稼働した需要予測システムと、今年5月に開始したCPFR(需要予測と在庫補充のための共同事業)への取り組みである。いずれも、最大の狙いは欠品を防止することだ。

 注文したものが「明日来る(アスクル)」というビジネスモデルを掲げる同社にとって、欠品の増加は命取り。注文受け付け後に配送の遅れを詫びるための事務コストが発生したり、商品を販売できなくなり、利益を圧迫するからだ。

 商品の品目数が増え在庫管理の困難さが増すなか、何らかの対策が不可欠だった。

需要予測で欠品率を半減に

 約3億円を投じた需要予測システムは、過去の販売実績データを基に、向こう6カ月分の需要予測を算出する機能を備える。文具や食料品など約1万2500品目ある商品に対して、全国に5カ所ある物流センターごとに需要を予測する。

 従来は、単品ごとに適正在庫量を設定し、これを下回ると機械的にメーカーや卸といった取引先に発注していた。一部の品目では需要予測を試み、発注量を細かく調整していたが、人手に頼っていたため、対象は2000~3000品目程度に限られていた。

 需要予測をシステム化したことによって、「平均的な商品では、予測と実際の需要との誤差は10%以内に収まる」(鈴木博之・ECRネットワークリーダー)という極めて高い精度を確保。欠品率と在庫回転率の改善に寄与した。

 稼働から1年近く経過した需要予測システムは、すでに効果が表れている。導入前後の同月で比較すると、欠品率はおおむね半減。一方、在庫量も昨年5月の約0.9カ月分から、今年5月は約0.6カ月分に減少した。一般に欠品率と在庫量はトレードオフの関係にあるが、在庫を積み増すことなく欠品率の大幅改善を実現したわけだ。

 7月4日発表の2002年5月期決算にも好影響を及ぼした。売上高が前期比23%増の925億円と堅調だったのもさることながら、目を引いたのは、経常利益が125%増えて39億円になったことだ。売上高営業利益率は2.4%から4.2%に向上。効率性が大幅に改善した。

サプライヤーの欠品が次なる課題

 需要予測システムが期待通りの効果を上げるものの、アスクルは次の壁にぶち当たる。取引先の側で欠品が発生するという問題だ。

 需要予測に基づいて欠品が発生しないように発注しても、取引先に在庫がなければ意味がない。「取引先側の原因による欠品が全体の約75%を占めるようになった。これをなくすことが急務だった」(同)。

 そこで登場するのが、今年5月に稼働した「シンクロマート」である。このシステムは、インターネットを通して需要予測システムのデータを取引先に提供する仕組み。米小売業最大手のウォルマート・ストアーズなどが実践していることで有名なCPFRの取り組みだ。これにより、欠品率を現在の半分から4分の1にすることを目指している。

 取引先は、専用のウェブ・サイトで、自社商品について単品ごとに「向こう6カ月分の需要予測」と「過去4週分の販売実績」を週次で見られる。「自社原因の欠品発生率」や「納期順守率」など、自社の評価にかかわることも分かる。さらに新商品の発売時に、重量や寸法といった商品情報をアスクルに伝える仕組みも備える。

 取引先が需要予測システムのデータを生産計画などに活用すれば、アスクルは必要数の商品を確保しやすくなり、欠品を減らせる。実際、「週次のデータをリアルタイムで見られるようになったため、ある文具メーカーは生産計画立案を月次から週次に切り替えた」(同)という。

 約400社ある取引先のうち、現在は住友スリーエム(本社東京)をはじめとする約50社が利用を開始。半年程度の試行の後、他の取引先にも参加を募る計画だ。

オリジナル商品の拡充も狙う

 CPFRの取り組みには、欠品を減らすことに加えて、取引先がアスクル向けに開発する「オリジナル商品」を強化する狙いもある。

 オリジナル商品とは、アスクル・ブランドの商品や、アスクル向けに定番商品のパック数を変更したものなどである。オリジナル商品の利益率は他の商品を10~15%上回るという。アスクルは2002年5月期に8%強だったオリジナル商品の比率を、来年には10%超にする目標を立てている。

 取引先にとって、オリジナル商品はアスクルを通じて売るほかなく、在庫が発生したときに他の流通経路で処分できない。当然、一般の商品以上に確実な需要把握が不可欠だ。シンクロマートを通じて正確な情報をつかめれば、アスクル向けにオリジナル商品を投入しやすくなる。

清嶋直樹 nkiyoshi@nikkeibp.co.jp