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企業が保有する資産や負債などを、決算時点における市場価格で評価する会計制度のこと。日本はこれまで資産などを取得した時点の価格を財務諸表に反映する「取得原価主義」の会計制度を採ってきた。これを2001年3月期から転換することで、投資家などが日本企業の実態を正確に把握できるようにすることが目的。

 2000年3月期から、上場企業が発表する財務諸表が「連結主体」に切り替わったことはご存知でしょう。日本企業にグローバル・スタンダードへの対応を迫る「会計ビッグバン」の一環です。しかし、2001年3月期には、もう1つの大きな改革が控えています。それが時価会計の本格的な導入です。

 これまで日本の会計制度では、株式や債券、デリバティブ(金融派生商品)などの金融商品、土地などについては、それを取得した時点の価格(取得原価)を財務諸表に反映させてきました。例えば、1株200円で購入した株式は、市場における株価が大きく変わっても、売却するまで200円の価値があるとして計上してきたのです。

◆制度
期末の市場価格で評価

 これに対して時価会計は、金融商品や土地、現預金などの資産と負債を決算期末における市場価格(時価)で評価し直します。これによって、いわゆる含み益や含み損を表面化させて、株主や投資家に、企業の実態をより正確に伝えることが目的です。

 時価会計は2001年3月期から2段階で導入します。まず2001年3月期には売買目的の株式やデリバティブなどの金融商品について時価評価が義務づけられます。そして2002年3月期には売買目的でも子会社関連でもない株式、いわゆる「持ち合い株」の時価評価がスタートします。

 この持ち合い株については、損益計算書(P/L)への計上ではなく株主資本に直接、算入することになっています。このため決算期中に株価が変動しても期間の損益は変わりませんが、株主資本の増減は株主資本利益率(ROE)に大きく影響します。持ち合い株の多くは投資効率が悪い銘柄が多いため、日本的経営の悪しき特徴だった株の持ち合いが減少していくと見られます。

◆影響
明確な情報戦略が必要に

 一連の改革は、企業の情報戦略にも少なからぬ影響を与えるでしょう。もはや含み益に頼ることはできないため、「他社が実施しているから」といった戦略なき情報化投資は許されなくなります。自社の収益に直結するコア事業などに集中的な投資をしてグループ全体の収益力を強化することが必要です。

 実際、富士電機や住友電気工業、キリンビールなど、ここ数年の間に会計システムを刷新した企業は、時価会計の導入を含めた会計ビッグバンへの対応は、目的の1つに過ぎないと考えています。新システムを活用して、グループ全体の実態を素早く把握。その競争力を強化していくことが、真の狙いなのです。

 そして時価会計の導入によって、そうした努力の結果が財務諸表から明確に読みとれるようになるでしょう。日本企業にとっては、これまで以上に経営戦略と情報戦略の巧拙を、厳しく問われる時代が到来するのです。

安部 俊廣 toshiabe@nikkeibp.co.jp