パソコンなどと接続して、文字や画像を表示するフィルム形状のディスプレイ装置。パソコンから切り離すと、電力を消費せずに情報を表示した状態を保持する。紙と同じく、情報の一覧性が高く軽量で持ち運びやすいという特徴を備えている。電子新聞や店頭用の商品広告といった様々な用途が考えられている。

 電子メールやホームページの情報を、紙に印刷して読んだことはありませんか。紙に打ち出せば、さっと目を通せるうえに、容易に持ち運べます。この紙の利点を備えたディスプレイ装置が、「電子ペーパー」です。現在は開発途上ですが、来年春にも実用化される見通しです。

 形状は、薄さ1ミリ以下のペラペラしたフィルムで、手で丸めることができます。パソコンやPDA(携帯情報端末)につないでいるときには、液晶ディスプレイのように次々と表示する情報を切り替えられ、切り離しても表示内容が保持されます。しかも表示内容を変えるとき以外は電力を消費しないので電源が要らず、容易に持ち運べます。

 いわば、自在に書き換えられる「紙」なのです。

◆効果
電子新聞や広告を実現

 これまでにない特徴を備えているだけに、携帯電話やPDA、ノートパソコンにおける液晶ディスプレイの代用としてだけでなく、様々な用途が考えられています。

 例えば、電子新聞。ネットを通じて記事を配信して、利用者の自宅にある電子ペーパーに表示させるというものです。新聞の印刷と配達が不要になり、コストを削減できるばかりか、制作した記事を読者がすぐに読めます。

 その構想は以前からありましたが、従来のパソコンやPDAでは、持ち運びや読みやすさの面で問題が大きく、実用化は難しかったのです。

 同じ理由で、雑誌やコミック、書籍などをネットで配信する「電子ブック」の普及にも、電子ペーパーが大きな役割を果たす見込みです。

 マーケティングにも使えます。店頭用の商品広告ポスターに電子ペーパーを使うと、手間をかけず即座に表示内容を切り替えられます。商品の入れ替えや時間、天候に合わせてきめ細かくポスターの内容を変えることが可能です。同様に、顧客の会員カードに電子ペーパーを張り付けて新商品の情報を表示し、来店時にレジで内容を書き換えるといったこともできます。

◆事例
イー・インクやキヤノンが開発中

 電子ペーパーの開発で先行しているのは、凸版印刷などが出資する米イー・インクです。ほかにも大日本印刷や富士ゼロックス、キヤノンなどがそれぞれ開発に乗り出しており、実用化を競っています。

 来年春にも発売される最初の製品は、既存の液晶ディスプレイと比べて、(1)高価である、(2)白黒表示しかできない、(3)動画を表示すると残像が発生して見にくい——といった問題を抱えることになりそうですが、そう遠くないうちに解決されていくでしょう。

 価格は、液晶ディスプレイよりも構造が単純なために、量産規模さえ大きくなれば安くできます。カラー化や動画表示についても開発が進められており、それぞれ2004年ごろと2007年ごろに実用化される見通しです。

中山 秀夫=日経ITプロフェッショナル