将来発生するキャッシュが、現時点でどのくらいの価値があるのかを算出する手法。一般に、事業投資の評価に用いられる。日本語訳は「割引現在価値法」。

 政府・与党は10月30日、不良債権処理の加速や雇用、中小企業対策を目的とした「総合デフレ対策」を発表しました。このなかに、銀行の資産評価を厳格にすることを狙って、2003年3月期から「ディスカウント・キャッシュ・フロー(DCF)法」を導入することを盛り込みました。

 DCF法は、将来獲得するキャッシュ(現金および短期に現金化できる債権)が、現時点でどのくらいの価値を持つかを評価する手法です。総合デフレ対策における活用法を説明する前に、まずはDCF法の仕組みを簡単に紹介しましょう。

◆効果
投資の可否を判断

 あなたが100万円の現金を持っており、金利10%(現実にはこんな高利はありませんが…)で預金したとします。すると、2年後には121万円を受け取れることになります。裏を返すと、2年後の121万円は、現時点では100万円の価値しかないことになります。

 一般の事業に対して、同様な考え方を当てはめたものがDCF法です。事業から得られる将来のキャッシュフローを1年ごとに予測し、金利を割り引いて合計したものが現在の価値になります。ここでは話を簡単にするために、将来のキャッシュから割り引く要素を金利だけにしましたが、DCF法ではもっと複雑な算定式を使います。詳細は省きますが、借り入れや株式による資金の調達コストを使って割引率を算出します。

 将来のキャッシュフローを予測してDCF法を適用すれば、事業ごとの現在価値が把握できます。例えば、新規事業の収益見込みにDCF法を適用すると、現時点でその事業がどのくらいの価値があるかを判断できます。現在の価値が1億円の事業の場合、1億円未満の初期投資であれば将来のキャッシュフローがプラスになると判断できるのです。逆に、1億円以上の初期投資が必要ならば、この案件は断念すべきです。

◆事例
銀行の引当金が膨張

 総合デフレ対策では、銀行にDCF法を導入することを求めています。融資先が計画した将来の収益見込みに対して、DCF法を適用して、現在の資産価値を算出するのです。

 銀行は、こうして算出した資産価値と融資額に基づいて、貸し倒れに備えた引当金を準備しなければなりません。これまで銀行は、融資先の業界ごとに統計的に算出された倒産確率などを使って、引当金を算出していました。DCF法による評価では、より現実に近いものとなり、従来に比べて2倍の引当金を積み増すことが必要になると言われています。これが、銀行業界がDCF法の導入に反対していた大きな理由です。

吉川 和宏 kyoshika@nikkeibp.co.jp