会計上と税務上で、費用や損金を計上する場合の差異から生じる税額計算のゆがみを調整する会計手法。企業のリストラを促進する効果があるとされる。

 企業の「会計上の利益」と、「税務上の課税所得」が必ずしも一致しないことはご存じでしょう。会計上は費用として認められても、税務上は損金として計上できないことがあるからです。「税効果会計」は、こうしたゆがみを調整するための会計手法です。

 別の言い方をすれば、「同じ税引前利益なら同じ税額になるようにする」のが税効果会計の狙いです。

 例を挙げて説明します。A社とB社が、2003年3月期に1億円ずつを売り上げたとします。費用もともに5000万円。さらに両社は1000万円の不良在庫を処理しました。

◆背景
同業績でも税額が違う

 ただし、A社は不良在庫を実際には廃棄せず、棚卸資産評価損として計上。一方B社は、不良在庫を廃棄したところが違いです。

 売上高が1億円で、費用が5000万円ならば、税引前利益は5000万円。法人税率を40%とすると、税額は2000万円。税引き後の当期利益は3000万円になるはずです。

 ところが、A社の棚卸資産評価損1000万円は、税務上は損金になりません。資産を実際に廃棄した時点で損金として認められる決まりです。

 そのため、A社の課税所得は税引前利益の5000万円に、棚卸資産評価損の1000万円を追加した6000万円になります。従って、同じ法人税率40%で計算すると税額は2400万円に膨らみ、税引き後の当期利益は2600万円に落ち込んでしまいます。

 A社が翌期に在庫を実際に廃棄すると、損金として認められ、今度は当期利益を押し上げます。費用や損金として計上するタイミングのズレといった、企業の業績とは関係がないところで当期利益が大きく変わってしまうわけです。

◆効果
大胆なリストラもしやすく

 税効果会計を導入すると、棚卸資産評価損1000万円にかかる法人税等を調整するために、1000万円×40%(法人税率)=400万円を「法人税等調整額」として算出し、損益計算書に計上した法人税等を減額します。ただし、実際の税額が減るわけではなく、あくまで会計上の処理です。

 税効果会計は国際的にも広く採用されており、日本では99年4月以降に始まる事業年度から適用されました。株式公開企業や商法上の大会社(資本金5億円以上など)に導入を義務づけています。

 導入すると、税負担が必要以上に膨らんで収益が悪化するのを防げるため、大胆なリストラや不良資産の処理をしやすくなる効果があるとされています。また、投資家が企業を比較するうえでも、業績をより正確に把握できるようになります。

花澤 裕二=日経ベンチャー hanazawa@nikkeibp.co.jp