IX(インターネット相互接続)事業を展開する米ピハナ・パシフィックと,IXのバイパス・サービスを提供する米インターナップ・ネットワーク・サービスはそれぞれ,2001年春から夏をメドに日本でサービスを開始する。IXと同時に,IXを基盤とした付加価値の高いデータセンター・サービスを提供。ECサイトなどは,より高速で便利なインターネット環境を手に入れられるようになる。

(河井 保博=kawai@nikkeibp.co.jp)

 米国のIX(インターネット相互接続)サービス・プロバイダ2社が日本に進出してくる。米ピハナ・パシフィックと米インターナップ・ネットワーク・サービスである。ピハナは2001年3月にも東京にインターネット・データセンターを開設し,サービスを開始。一方,インターナップはNTTエムイー(NTT-ME)と業務提携。2001年4月をめどに合弁会社を設立し,2001年夏にもサービスを始める。

図1●中立的IXをベースにしたデータセンター
米ピハナ・パシフィック,米インターナップ・ネットワーク・サービスが日本でサービスを開始する。IX用の施設を活用してデータセンター事業も展開。既存IXの混雑を避けられるため,ユーザーから見たパフォーマンスを向上させやすくなる。また,データセンターを利用するコンテンツ提供者にとっては,複数のISPのネットワークを併用して冗長性を持たせるなどの自由度が高い。
図2●中立IXはインターネット接続サービスのマーケットプレイスになる
データセンターを利用するWebサイトなどから見ると,ISPの選択の幅が広がり,インターネット接続のマーケットプレイス的な存在にもなる。また,ISPにとっては,IXへの接続用回線として任意の通信事業者のサービスを利用できる。このため,「中立」と呼ばれる。
 IXは,ISP(インターネット・サービス・プロバイダ)のバックボーンを相互接続するゲートウエイ。両社は,IXサービスと同時に,IX設置用の施設(インターネット・データセンター)を活用してハウジング/ホスティング・サービスも提供(図1[拡大表示])。IXを基盤にすることで,さらにサービス品質の高いデータセンターを実現するという。

 国内では日本インターネットエクスチェンジ(JPIX)などがIXサービスを提供している。IXは数多くのISPからの回線を収容し,各ISP間のトラフィックを交換する。このため,トラフィックの集中を避けられず,既存のIXだけでは,IXが通信のボトルネックになってしまう危険性が高い。そこで,ピハナやインターナップは,IXのボトルネックを回避し,高品質なインターネット環境を提供しようとしている。

キャリア・フリーが売り物のピハナ

 それぞれのサービスの特徴をもう少し具体的に見てみよう。

 ピハナの場合,最大の売り物は,IXのスケーラビリティと,データセンターの「ネットワーク的な中立性」である。同社は,2000年8月にサービスを開始したハワイに加え,米国ロサンゼルス,香港,台北,ソウル,シドニー,シンガポール,そして東京に順次データセンターを設置し,広域分散型のIXを実現する。広域分散型にすることで,スケーラビリティを確保できる。

 もう1つのネットワーク的な中立性は,言い換えると,インターネット接続を特定のISPや通信事業者に依存しないということである。既存のIXやデータセンターの多くは,独自のインターネット接続回線やバックボーン・ネットワークを持つため,ユーザーから見ると通信事業者やISPを自由には選べない。例えば,ISPがIXに接続するための回線は特定の通信事業者のサービスに限定される,ECサイトが特定のISPネットワークしか利用できずネットワークの冗長性を実現しにくい,という具合である。

 この点,ピハナはバックボーン・ネットワークを一切持たない。あくまでも通信事業者やISP同士の相互接続性だけを提供し,同社のデータセンター間は通信事業者やISPが必要に応じて自前で接続する。このため,ECサイトなどはピハナと契約を結んでいるISPの中から自由にISPを選択できる。ピハナはさらに,同社と契約する通信事業者やISPのサービスに関する情報を集め,インターネット接続サービスのマーケットプレイスのような機能を提供することも考えている(図2[拡大表示])。

インターナップは高速化に主眼

 一方,インターナップのサービスは,複数のISP間をまたがるトラフィックを,既存のIXをバイパスさせて中継するサービス。インターナップが世界中に20以上設置しているP-NAPと呼ぶ設備にISPのバックボーン回線を接続し,ISP間のトラフィックを中継する。表現こそバイパスとしているが,役割はIXそのものである。複数のP-NAP間は,いくつもの大手ISPのネットワークを利用した「仮想バックボーン」で接続。広域分散型のIXを実現している。

 同社の特徴は,トラフィックを中継する際に,独自開発した技術やシステムを使ってネットワークの混雑を自動検出し,混雑を避ける経路を選んでデータを転送する点。米アバブネット・コミュニケーションズのサービスと非常によく似たサービスで,混雑する既存IXを避けると同時に,バックボーン上で最短ならぬ“最速”経路を選ぶ。このため,P-NAPに接続するISPや,インターナップのデータセンターを利用するECサイトは,エンドユーザーに対して高いパフォーマンスのサービスを提供しやすいという。