UIの作り込みが不要に

 サービス提供者によっては,「接続先のサイト・デザインに合わせた作り込みをユーザー企業側に任せやすくなった」というメリットを挙げる。これまで,ページのデザインや遷移をユーザー企業のサイトに合わせてカスタマイズしてきた企業は,このメリットを挙げる。画像データのプリント注文機能を提供するASPサイトを運営する富士写真フイルムや,百貨店サイトに自社商品の販売機能を“出店”している仏ロレアルのドイツ法人などは,その例だ。

図2●富士写真フイルムは画像データのプリント注文を受け付けるWebサービス・システムを構築
マイクロソフトが運営するMSNは, Windows XPに搭載されたウイザードと連携し,画像データを印画紙に出力して配達してくれるサービスを提供している。MSNから富士写真フイルムが運営するWebサービス・システムを呼び出し,実現している。

 富士写真フイルムの場合は,米マイクロソフトが運営するMSNサイトに画像データのプリント注文機能を,XML/SOAPを使って提供する(図2[拡大表示])。従来,このような場面では,相手サイトのデザインなどに合わせて,富士写真フイルムが運営するASPサイトを作り込むケースが多かった。相手サイトは,プリント注文サービスも,そのサイトと同じデザインや操作性でユーザーに提供したいと考えるからだ。こうした手法では,相手サイトのデザインなどが変更されるたびにASPサイトにも手を入れなければならず,運用に手間がかかっていた。相手サイトの要望に十分こたえきれない場面もあった。

 富士写真フイルムでは,MSNサイトとの接続にWebサービス技術を利用したことで,ユーザー・インタフェース(UI)の作り込みをマイクロソフト側に任せることが可能になった。マイクロソフト側から見ても,自社の都合でユーザー・インタフェースを自由に変更可能で,ビジネス展開やUI改善のスピードを向上できるメリットがある。「従来は,システム間でのデータ転送の難しさから,入力処理などを含むUIの実装を相手側に任せることが不安だった。それが,接続が容易で異種システム間でも相互接続性が高いWebサービス技術を利用すれば,ユーザー企業側に任せても不安は少なくなった」(富士写真フイルムの原氏)。

インタフェース変更に柔軟性

図3●Webサイトへの機能追加にWebサービスを利用する
NTT,富士通,ミュージカル・プランが実施する実証実験の例。歌手や作曲家のファン・クラブ・サイトにEC機能や翻訳機能などを付加するために,複数の企業が提供するWebサービスを利用する。中川氏のサイトではWebサービスを静的に呼び出していたが,喜多郎氏のサイトでは動的に呼び出す。

 取引先ごとに用意する接続インタフェースが柔軟になり,構造の変換などがしやすい点もメリットだ。こうした場面では,構造の変換や項目の追加/削除が容易なXMLの特性が生きてくる。コダック,富士写真フイルム,ヤマトシステム開発,郵船航空サービスなどが,この点に着目している。

 「やりとりするXMLデータの構造などは相手の要望に合わせることが基本になるため,現実に接続インタフェースを一本化することは難しい。しかし,XMLの構造を変換するだけであれば簡単な作業で済む」(郵船航空サービス 情報システム部 副部長の平野 拡司氏)。むしろ,「接続先の数が増えてこないと,本当のインパクトは見えにくい」(富士写真フイルムの中島氏)。

 サービスを利用する側でも,Webサービス技術のメリットを得ようというサイトが出てきた。ココロネットワークスが運営するサイトがその一例だ。同社は,音楽アーティストである喜多郎氏のファン・クラブ・サイトに,Webサービス技術を使って外部システムの機能を追加する実験を2002年9月に開始した(図3[拡大表示])。接続インタフェースをWebサービス技術で統一することにより,「インタフェースの設計,管理が容易になり,サービスの連携がしやすくなる」(SIに参加するミュージカル・プラン 社長の江守 幸一氏)。

 現段階で連携しているWebサービス・システムは少ないが,2003年1月には,翻訳,CD販売,グッズ販売,写真販売,クレジット決済などの機能を追加する計画だ。

ビジネス上の手間は残る

 技術上の手間は省けても,「ビジネス上の交渉や契約といった実務作業は依然として必要だ」(江守氏)。

 ビジネス情報のディレクトリであるUDDI(汎用的な記述/発見/統合)レジストリを使えば,契約条件や取引条件を公開することはできる。また,試験用のWebサービスの所在を示し,接続可能であることを検証してから,ビジネス面の交渉を詰めるといった運用も可能になる。

 それでも現段階では「完全に自動化できる水準にはない」(富士写真フイルム DIソフト開発部の中島 一城氏)。ビジネス上の交渉や契約などを簡易化したければ,「企業ごとや業界ごとに,独自の拡張が必要になるケースもあるだろう」(コダック デジタル開発本部 副本部長の宇田川 清司氏)。