NECやエキサイトなど,プッシュ型配信サービスを開始する企業が相次いで登場した。かつて,米ポイントキャストが中心になり,一世を風靡(ふうび)したプッシュ配信だが,常時接続環境の普及を追い風に,再び注目を集め始めている。新たにサービスを提供する企業は,いずれも「常時接続時代にこそプッシュ型は最適」と新サービスに自信を見せている。

(小川 弘晃=hrogawa@nikkeibp.co.jp)

 新しい情報提供の形として数年前に脚光を浴びた「プッシュ型配信サービス」が,息を吹き返そうとしている。インターネット経由でユーザーのデスクトップ・パソコンにコンテンツを自動的に届けるサービスである。

表1●プッシュ型配信サービスを手掛ける主な企業

 2002年半ば以降,相次いでプッシュ型配信サービスを手掛ける企業が登場した(表1[拡大表示])。2002年6月にはエキサイトが,8月にはユーキャストコミュニケーションズがそれぞれサービスを開始。11月にはNECとアルファブリッジがあとに続いた。既に,エキサイトのサービスの利用者は予想より1カ月早く2002年11月に10万人を突破。ユーキャストコミュニケーションズは,4カ月で約7万人の利用者を集めた。どちらも「上々の出足」である。

図1●アルファブリッジのプッシュ型配信サービス「PuCa」
専用のクライアント・ソフト「PuCaプレーヤー」が,コンテンツの更新・管理・再生などの処理を行う。パソコンを利用していない時間にコンテンツをダウンロードし,ハ―ド・ディスクに蓄積する。ハード・ディスクから直接コンテンツを呼び出すので,ストレスなくコンテンツを閲覧できる。
 プッシュ型配信サービスは,かつて米ポイントキャストが一大ブームを築いた。一時は米国で120万ものユーザーが利用。だが,結局ユーザーには根付かなかった。原因は,当時はダイヤルアップ接続が主流で“プッシュ”を生かせなかったことと,多くのユーザーは回線速度が遅くプッシュ配信に耐えられなかったことである。

 この点,各社の担当者は「ブロードバンドの浸透で状況は変わった」と口をそろえる。ADSL(非対称ディジタル加入者線)などブロードバンド接続は,数Mビット/秒以上と高速で,常時接続が当たり前。エンドユーザーは最新の情報を自動的に入手でき,コンテンツ提供者はユーザーに情報をダイレクトに届けられる。こうした点に魅力を感じるユーザーが多いことは,最近のメール・マガジンの広がりからも容易に想像がつく。しかも,今回はネットワーク面の足かせはない。

専用ソフトで最新情報を自動取得

 プッシュ配信の大まかな仕組みは各社でそれほど違いはない。専用のクライアント・ソフトが,配信サーバーから定期的に情報を取得する。NEC以外の3社では,あらかじめ専用ソフトをダウンロードする必要がある。NECの場合,ブラウザ上で動くFlashアプリケーションを利用する。

写真1●ユーキャストコミュニケーションズの「mypop」
定期的に専用のブラウザが現れ,最新の情報を提供する。一定の時間が過ぎると,画面の外に隠れる。
 ただし,クライアント・ソフトの仕組みや当初提供されるコンテンツの内容は,少しずつ異なる。例えばアルファブリッジが提供する「PuCa」(プーキャ)のクライアント・ソフトは,取得したコンテンツをハード・ディスクに蓄積する(図1[拡大表示])。このため,映像のような大容量のコンテンツも配信の対象にしやすい。第三者による不正な閲覧を防ぐために,コンテンツを暗号化する仕組みも備えている。

 一方,他のサービスでは,コンテンツはハード・ディスクには蓄積されない。専用ソフトを起動するたびに,配信サーバーから最新の情報を取得する。ユーキャストの「mypop」のクライアント・ソフトは,Javaで開発されたブラウザで,定期的に情報のタイトルなどのテキスト情報を取得する。ユーザーが最新情報へのリンクをクリックすると,Webブラウザが立ち上がり,詳細の情報を閲覧できる(写真1[拡大表示])。ミソは,最新情報を取得すると,その旨を自動的に画面にポップアップ表示する点。商品のキャンペーン,タイム・サービスといった時間に限りがある情報を,できるだけタイムラグなくユーザーに届けるための仕組みである。


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