サーバーのCPUリソースをユーザーが柔軟に増減できるサービスが相次いで登場した。業務のピークなどに合わせて,サーバーの性能を機動的に変更し,トータルでのコストを抑えられる。電気や水道と同じように,使った分だけの料金をベンダーが計算して請求するサービスもある。ただし,ソフトウエアのライセンス面での課題も残っている。

(前田 潤=maeda@nikkeibp.co.jp)

図1●日本IBMの「On-Offキャパシティー・オンデマンド」の仕組み
ユーザー企業のシステム管理者などが,インターネットを介して米IBMの専用Webサイトへアクセスし,メインフレームのCPUを活性化/無効化するためのアクセス・キーを入手する。そのキーを管理コンソールから入力することで,CPUの状態を変更できる。
 Webサイト上で販促キャンペーンなどを実施する際には,殺到するアクセスをさばくためにサーバーに高い処理能力が要求される。しかし,ピークに合わせて高性能機を導入するのは,投資効率が悪すぎる。そこで,必要なときに必要なだけサーバーの能力を提供し,コストに敏感なユーザーのニーズに応えようとするサービスが現れた。

 日本IBMはメインフレーム「zSeries 990」を対象に「On-Offキャパシティー・オンデマンド」(図1[拡大表示])を年内にも開始する。「非活性化」されたCPUをユーザー操作で活性化させたり,非活性状態に戻せる。料金は日割り計算で,1日あたりのコストは,通常の導入価格の45分の1程度だ。

 同様のサービスは日本ヒューレット・パッカード(HP)も2001年夏に「PayPerUse Active CPU Option」として同社のUNIXサーバー向けに導入済み。料金体系は機器構成などによって異なるが,HPによる試算例では,16CPUのサーバーのリース価格と,平常時に16CPU中の10CPUを利用した場合の料金がほぼ同等。大部分の期間,10CPU以下の能力しか必要としないなら,16CPU機を通常リースするより安い。

 別の例として,年間2カ月間が繁忙で16CPUが必要だが,残る10カ月は4CPUで済むという状況では,3年間のリースの支払総額は約5033万円。16CPUのマシンを3年リースした場合の約7444万円の3分の2で済む。

本体買い取り,追加機能レンタル?

 CPUの増減作業そのものは容易だが,現実には運用面での障壁がある。まず,CPUの追加はコスト増を伴うため,システム部門など現場の判断だけでは実施しにくい。リース会社がこうした特殊な契約に対応するのか,資産価値が一定しないサーバーを会計上どう評価するかといった問題もある。

 また,HPやIBM自身や提携企業のソフトウエアなら従量課金に対応しても,ソフトウエア・ベンダーによっては対応しない可能性もある。対応したくとも,課金や料金回収の手間を考えると対応できないケースもありうる。

 IBMでは,新サービスの開始に向けて,こうした契約内容を詰めている段階だ。基本部分はリースか買い取り,追加CPUはレンタルといった契約も考えられる。このようなサービスがユーザーに受け入れられるかは,IBMが提示する契約条件次第だ。HPではリースのみの対応とし,そのリースもHP自身の金融部門がハードもソフトも一括して担当している。

使っただけ払う“水道料金方式”も

図2●日本ヒューレット・パッカード(HP)の「Pay Per Use Percent CPU Option」の仕組み
ユーザー拠点のサーバーにインストールした「Metering Agent Software」が定期的にCPUの利用率をチェックし,米HPのサーバーに通知する。この情報に基づき,ユーザーの使用量に応じた料金が後日請求される。

 これらのサービスでは,CPUの増減はユーザーの判断で行う。その判断や増減の作業さえ不要としたサービスも出てきた。蛇口を開閉するだけで利用できる水道などに近い形態である。

 HPが5月に発表した「Pay Per Use Percent CPU Option」(図2[拡大表示])では,搭載したCPUはすべて利用可能な状態になっており,その「利用率」で料金が決まる。一見して便利そうだが,アプリケーションが暴走してCPU利用率が跳ね上がった場合など,その分の料金を請求されるリスクもある。

 また,搭載CPUがすべて稼働状態にあるため,ソフトによっては,たとえ1CPU分の能力しか利用していなくても,全CPU数に対応した料金が必要。ただし,これについては,「年末頃には何らかの対応ができる」(日本HP)という。

 IBMがメインフレーム用のOSやミドルウエアのソフトウエア料金に導入している「WLC(ワークロード使用料金)」も水道料金方式だ。ソフトウエアが利用したLPAR(論理区画)の容量に応じた代金を後払いする。

 WLCの登場は2000年だが,当時はソフトウエアが250MIPS相当以上の処理能力を利用することが条件だった。これを7月に,18MIPS相当からと大幅に緩和する。CPUの利用効率が高いレガシー系アプリケーションなどにも,適用しやすくなる。