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図5 重複して使うことが認られているアドレスもある
インターネットを介して通信する場合には,必ず世界で一意の「グローバル・アドレス」を用いなければならない。ただし,組織内に閉じた環境やルーターを介さない小規模ネットでの利用については,重複しても構わない特別なアドレスを設けている。

特定の場所だけで使えるアドレスもある

 ユニキャスト・アドレスについて,もう少し詳しく見てみる。

 ユニキャスト・アドレスは,世界で一意でないと通信そのものは成り立たないと紹介したが,利用する場所を限定し,その中で一意になるなら別の場所と重複して使ってよいアドレスもある。この利用場所を限定したアドレスが,「サイトローカル・アドレス」と「リンクローカル・アドレス」だ(図5[拡大表示])。これに対して,重複が認められない通常のアドレスをグローバル・アドレスと呼ぶ。

 グローバル・アドレス,サイトローカル・アドレス,リンクローカル・アドレスとして使うアドレスの空間は,それぞれあらかじめ決まっている。このため空間の構造を覚えてしまえば,あるIPv6アドレスを見た際に瞬時にどの種類のアドレスなのかすぐに見分けられるようになっている(図6[拡大表示])。

 グローバル・アドレスは,その名から推測できるようにインターネット上で使う。アドレスの上位64ビットは,ルーターから教えてもらう。

図6 アドレス空間の配分は決まっている
ユニキャスト,マルチキャスト・アドレスごとに,利用するアドレス空間の範囲はあらかじめ定めてある。エニーキャスト・アドレスは,グローバル・アドレスのうち,ネットワーク部以外のビットがすべて0のものを指す。
 サイトローカル・アドレスは,ある組織内に閉じた通信で用いるもの。IPv4のプライベート・アドレスに相当する。サイトローカル・アドレスを使うメリットは,アドレスを正式に取得する必要がないこと。APNICなどにいちいち申請してIPv6アドレスを割り振ってもらう必要がない。

 別々の企業が同じサイトローカル・アドレスを利用しても,お互いに直接通信することはないので差し支えない。アドレスの上位64ビットをルーターから教えてもらう点ではグローバル・アドレスと同じであるものの,上位48ビットは「fec0:0:0」に固定される。

 なお今回は説明を省略するが,マルチキャスト・アドレスにもリンクローカル・アドレスやサイトローカル・アドレスがある。

リンクローカル・アドレスは実験向き

 もう一つのリンクローカル・アドレスは,ルーターを介さずに通信できる範囲(リンクと呼ぶ)で,コンピュータ同士が通信する際に使うものである。

 リンクローカル・アドレスを使う例としては,コンピュータがルーターからネットワークのさまざまな情報をもらう場合があげられる。グローバル・アドレスやサイトローカル・アドレスでは,上位64ビット分の情報をルーターから受け取るが,このときにリンクローカル・アドレスを使っている。

 リンクローカル・アドレスは,ほかの2種類のアドレスと違って,128ビットすべてをコンピュータ自身で生成する。先頭から64ビットは,「fe80:0:0:0」で固定である。

 リンクローカル・アドレスは,ちょっとした実験に用いるには大変便利である。

 私の周りにはWIDE プロジェクトと呼ぶ産学協同プロジェクトのメンバーが多いのだが,そこでIPv6の研究者達が集まって新しいIPv6の機能を実験するときには,まずこのリンクローカル・アドレスを使う。だから,私達の頭からは「fe80:」という数字は離れなくなってしまったほどだ。

 ちなみに,もう一つ頭から離れないのが「3ffe:」。IANAがIPv6アドレスを正式に管理する前にテスト利用していたアドレスが,「3ffe:」で始まるものだったからだ。長年使ってきたので,最初は人間には覚えきれそうもないと感じた128ビットのアドレスでも,一目見れば「これは,あの組織が使っているアドレスだな」とわかったものである。