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 今回は,ネットワークの中でLANスイッチがどう振る舞っているかに着目する。LANスイッチなら必ず持っている基本技術から,LANスイッチの発展形ともいえる新技術まで,知っておきたい五つの技術を紹介する(図1[拡大表示])。ここでも,個別に技術解説を始める前に,個々の技術の位置付けを示すことから始めよう。

図1 LANスイッチを使いこなすための五つの技術
LANスイッチを使うときは,以下の5つの技術をマスターしておこう。(1)MDI/MDI-X変換,(2)オート・ネゴシエーション,(3)スパニング・ツリー,(4)バーチャルLAN,(5)レイヤー3スイッチング――である。

なくてはならないオート・ネゴ

 LANスイッチでネットワークを構築する最初の一歩は,LANケーブルをLANスイッチのモジュラ・コネクタに差し込むこと。ごく当たり前の作業だが,ちょっとした注意が必要になる。LANケーブルとモジュラ・コネクタがが2種類あるのだ。正しい組み合わせでなければ通信できない。

 ここで生じる不都合を解決する技術が「MDI/MDI-X変換」だ。たいていのLANスイッチが持っているモジュラ・コネクタの仕様なので,しっかりと理解しておこう。

 「オート・ネゴシエーション」は,MDI/MDI-X変換と並ぶ基本的な接続技術。接続されたパソコンのLANアダプタと10Mビット/秒で接続するか,100Mビット/秒で接続するかを自動的に識別する機能だ。全2重モードで通信するかどうかも,このオート・ネゴシエーションで決まる。どのようなプロセスで速度とモードを決定するのか,じっくり解説する。

付加価値高めるバーチャルLAN

 LANスイッチは,パソコンやサーバーをコンピュータと接続するだけでなく,ほかのネットワーク機器をLANに接続する場面でも使用される。そうした状況を想定して開発された技術が,「スパニング・ツリー」と「バーチャルLAN」(VLANブイランともいう)だ。

 スパニング・ツリーは,LANスイッチ同士が混在する比較的大きなネットワークで必要となる技術。フラッディングによってフレームが配信されたとき,LANスイッチがフラッディング・フレームを再中継するのを防ぐ。LANスイッチ間で制御データをやり取りするので,LANを混雑させないように,出荷時はオフ設定のこともある。仕組みを理解して設定すべきかどうか考えよう。

 バーチャルLANも,フラッディングしたフレームに関係した技術。こちらはフラッディングを意図的に制御する技術だ。これによって,通信できるコンピュータの組み合わせを,運用者が任意に設定できるようになる。結果として,パフォーマンスの向上やセキュリティの確保といったメリットも得られる。便利なVLAN機能であるが,設定を誤ると通信できなくなる。動作をきちんと理解しておきたい。

IPアドレスで中継するL3スイッチ

 LANスイッチの発展形ともいえる新技術は,「レイヤー3スイッチング」だ。製品は,L3スイッチと表記することが多い。

 この技術は,これまでルーターが担当してきた中継機能を肩代わりすることを狙って開発された。中継処理の一部をハードウエア化し,従来のルーターより中継処理を高速にした。

 レイヤー3スイッチングは,MACフレームが運ぶIPパケットなどに含まれたアドレスを見る。IPパケットは「ネットワーク層」や「レイヤー3」と呼ばれることからこの名前が付いた。

 レイヤー3スイッチの動作原理はLANスイッチと似ているが,ルーター・ネットワークにおいてはルーターとして動作する。ただし,LANスイッチ機能もあるので,LANスイッチとしても動作できる。どちらで振る舞うかは,受信フレームの内容で決めている。

 ではさっそく,それぞれの技術について詳しく見ていこう。

MDI/MDI-X接続

クロス・ケーブルを不要に

 LANで一般的に使われているケーブルは,UTPケーブルと呼ばれるより対線ケーブルである。より対線ケーブルは,8本の銅線を2本ずつ束ねた4本のより対からなる。こうしたことから,モジュラ・コネクタ(LANスイッチのポート)も,それぞれの銅線に対応する8個のピンがある。

図2 LANポートは2種類ある
LANケーブルは,送信ピンは相手側の受信ピンと,受信ピンは相手側の送信ピンと結線する必要がある。LANスイッチのポートには,MDIポートとMDI-Xポートの2種類があり,MDIポートは1番と2番ピンが送信,3番と6番が受信ピンである。MDI-Xポートは,ポート側で送信側と受信側のピンを入れ替えてある。

使いにくいクロス・ケーブル

 10Mビット/秒のイーサネット(10BASE-T)と100Mビット/秒のイーサネット(100BASE-TX)は,どちらも8本ある銅線のうち4本を使う。ポートは,1番ピンと2番ピンが送信用,3番ピンと6番ピンが受信用である。そのほかのピンは使わない。このポートのタイプをMDI(media depend inter-face)と言う。

 MDIポート同士を接続するときは,送信と受信の関係を意識する必要がある。送信ピンで送信したデータを相手側の受信ピンに,受信ピンに対しては相手側の送信ピンを接続するわけだ。

 さて,ポート同士を接続するより対線ケーブルは二つの種類がある。ケーブル両端のポートの同じ番号のピンがそのままつながっている「ストレート・ケーブル」と,両端のピンの結線が途中で交差している「クロス・ケーブル」だ。MDIポートを相互に接続する場合はクロス・ケーブルを使う。

 だが,クロス・ケーブルは,LAN配線全体で考えた場合,使いにくい面がある。クロス・ケーブルを直列につないで中継するケースがしばしばあるからだ。クロス・ケーブルを2本つないだ時は,全体でストレート・ケーブルに,3本つないだ時は再び全体でクロス・ケーブルになってしまうため,LAN全体で配線が混乱してしまう。

写真1 MDIポートとMDI-Xポート
左の「=HUB」と書いてあるポートがMDIポート。右の「×PC」と書いてあるのがMDI-X変換ポート。

機器側で結線を交差するMDI-X

 こうしたケーブルの違いによる配線の混乱を避けるため,多くのLANスイッチは,ポート内部で送信と受信の結線を交差させたポートを持っている。結線を交差させたコネクタを,結線の交差を示す「×」を付けてMDI-Xポートと呼ぶ(図2[拡大表示])。

 ポートとケーブルの関係を整理しよう。MDI同士を接続するときはクロス・ケーブルを,MDIとMDI-Xを接続するときはストレート・ケーブルを使う。LANスイッチはMDIとMDI-Xの両方を備えるので,相手に合わせることでストレート・ケーブルだけで配線できる。通常,パソコンとはMDI-Xポートで接続する。

ポートに書かれたマークで確認

 MDI-Xポートは,ポート近くにMDI-Xを示す「×」のマークが表示されている。対して,MDIポートには,「=」のマークが付いているものが多い(写真1[拡大表示])。

 LANスイッチの機種によっては,一つのポートに二つのタイプのコネクタが用意されていたり,MDIとMDI-Xを切り替えるスイッチが付いていたりする。