今やブロードバンドの代名詞ともいえるADSL。当初は最大1.5Mビット/秒だった速度も,現在では8Mが主流になり,さらに最近では各事業者が相次いで12Mビット/秒のサービスをスタート。ますます勢いをつけている。でも,電話線を使いながらADSLより約5倍も速い技術が登場し,すでにその技術を利用したサービスが始まっていることをご存知だろうか?

 VDSLと呼ばれる新技術がそれ。VDSLの頭のVは,very high bit rate(超高速)の略で,最大50Mビット/秒の速度を実現する。これまでは,ADSLより高速でインターネットにつなぐには,光ファイバを使うFTTHサービスに契約し直すしか手がないというのが常識だった。それだけに,そんな技術の登場に期待を寄せるユーザーもいるだろう。もちろん,メーカーや通信事業者もVDSLに注目しており,製品の出荷やサービス提供を始める企業も出てきている。一部ではすでにVDSLの恩恵にあずかっているユーザーもいるのだ。

 でも「VDSLって何?」という読者もいるだろう。そんなにすばらしい技術ならもっと知名度が高くてもいいはずなのに,高速なDSL技術の話題といえば,まだまだ12メガADSLに軍配が上がる。なぜなのだろう? その理由は,VDSLには大きな弱点があるからだ。

 実は,VDSLが50Mビット/秒で伝送できる距離は300m程度と短いのである。これは,高速で通信するために最大12MHzという高い周波数の電気信号を使うから。8Mや12MのADSLで使うのが最大1.1MHzの電気信号だから,10倍以上の違いだ。電気信号は,周波数が上がれば上がるほど減衰しやすくなり,伝送距離が短くなる。伝送距離が300mしかないのでは,ADSLと同じようには使えない。

 短い距離でしか使えないなら,ほとんどのユーザーには関係ないはず。そんな技術が,どうして脚光を浴びているのだろう? それは,光ファイバと組み合わせることで,その弱点をカバーできるからだ。VDSLを使うサービスの場合,通信事業者が電話局からユーザー宅のすぐ近くまで引いてある光ファイバを活用し,距離を大幅に稼いでから,その先にVDSLの設備を置くのが一般的。各家庭までつながる電話線を束ねて光ファイバに収容することで,電話線の長さを300m以内に抑えるのだ。

 具体的には,マンションなどの建物まで光ファイバを引き込む。光ファイバ部分は100Mビット/秒といった回線速度を共用することになるが,これならたとえ電話局から何km離れていても,理論的には各家庭で最大50Mビット/秒の超高速インターネットが利用できるというわけだ。実際にサービスが始まっているのも,マンションなどの集合住宅向けのもの。例えば都市基盤整備公団(都市公団)では,現在東京都内の4団地にVDSLシステムを導入済み。今年度中に東日本の32団地,西日本の25団地にも導入する予定である。居住者ならだれでも月額2500円前後で最大50Mビット/秒のインターネット接続サービスを利用できるのである。

 プロバイダが限定されるという弊害はあるものの,マンションや公団住宅に住むユーザーにとって,VDSLは期待の技術といっていだろう。

高田 学也